Date: Thu, 11 Sep 2002 22:12:23 +0900
Subject: Re:新型精密てんびんの紹介
From: 館長
To: 製薬メーカー研究員

 まったく同じことが「驚くべき秘密」として繰り返し発明・発見されておるそうじゃが、これを早とちりという。さて、17世紀に数学者にロベルバルというフランス人がおって、平行四辺形の幾何学的性質を運動機構に応用して「平行運動機構」を発明したそうじゃ。それ以来、彼の名にちなんでロベルバル機構とも呼ばれておるこのしくみは、とても単純なものであるにもかかわらず現在のハイテク測定装置の中でも高い精度で測定するためのセンサーに応用されておるそうじゃ。つまり時代が変わっても技術の基本は変わらんということじゃな。

 
◆こたえ
 ロベルバルの発明した平行運動機構を利用していて新発明ではない。

◆解説
 いずれのてんびんも水平状態で支点の直下に重心Gがあるとする。オモリ(荷重=W)を図1のように左:右=L1:L1となるように吊るす。一般的なてんびんの場合、支点のまわりで左右のモーメントは等しく(L1×W=L1×W)釣りあう。てんびんが傾いているとき(破線)、オモリによるモーメントは傾きに関係なく"0"であるが、てんびん全体の重心が支点直下からずれるので、これを元に戻す復元力が働いて水平で釣りあう。重心が支点と同じ位置にある場合は傾いた状態で静止する。重心をずらすのは「水平」という分かりやすい状態をつくるための仕掛けなのである。ロベルバルのてんびんの場合、左右の荷重は平行四辺形の変形を介して平行四辺形の鉛直方向で等しくなる(W=W)。傾いた場合も同様に復元力が働いて水平で釣りあう。図2のようにオモリを右にずらしても、ロベルバルのてんびんでは、オモリの位置に関係なく左右の荷重は平行四辺形の変形を介して鉛直方向で等しく働き、水平で釣りあう。これは、平行四辺形の幾何学的性質によりこれを変形しても左右のオモリの鉛直方向の移動距離が水平方向の位置に関係なく一定であるため、左右で「仕事(位置エネルギー)」が保存されていることからも説明できる。

ロベルバルの不思議ばかり