Makoto Manabe

真鍋 真(まなべ まこと)
標本資料センター
名誉研究員

恐竜は完全に絶滅したわけではなく、一部は鳥類として現在も進化を続けていることはご存知の通りです。鳥類以外の恐竜の絶滅は、約6600万年前に現在のカリブ海に小天体が衝突したことで起こった、急激な環境変化が主な原因だと考えられていますが、同じ頃に起こっていた他の現象も大きな影響を及ぼした可能性が指摘されています。恐竜が生態系の主体だった中生代と、その後の新生代の境界の上下の地層で、脊椎動物化石はもちろんですが、微化石や植物化石なども含めて、生物多様性や生態系 にいつどのような変化が起こったのか、世界中で研究が進められています。

わたしは現在、白亜紀最末期の生物多様性に、小天体衝突前に何か変化があったのかどうかという問いに答えようと、この時代のいろいろな化石を研究しています(▶図1)。3年半前のこの展示(私の研究)では、鹿児島県薩摩川内市の甑島から、ケラトプス類の歯だと考えられる標本が見つかったことを紹介しました。2016年12月にこの化石についての短い論文が出版されました(▶図2)。甑島からはその後まだ追加標本は見つかっていませんが、似たような化石がどこかの博物館の収蔵庫に眠っているかもしれません。この論文を読んだ研究者が、気がついてくれるかもしれないと密かに期待しています。

地球館地下1階の恐竜展示室にパキケファロサウルスの実物化石が展示されています(▶図3)。近くから小さな後頭部の化石が発見されています。ある研究者は、それはパキケファロサウルス類の別種だと考えますが、別の研究者はパキケファロサウルスのこどもではないかと考えています。研究者間の意見の相違ですが、パキケファロサウルス類が白亜紀最末期に何種類いたのかは、白亜紀最末期の生物多様性の考察に影響を与える問題です。

白亜紀_古第三紀_境界線図1:アメリカ・コロラド州南部で白亜紀(中生代)と古第三紀(新生代)の境界付近を指差す筆者 左はデンバー自然科学博物館のIan Millerさん(専門:植物化石)、中央は同館のTyler Lysonさん(専門:爬虫類化石)。 2016年10月撮影:地学研究部・佐野貴司グループ長
論文図2: 鹿児島県薩摩川内市の甑島で発見
パキケファロサウルスの全身復元骨格図3:当館地下1階に常設展示されているパキケファロサウルスの全身復元骨格
黒い部分はアメリカ・サウスダコタ州で採集された実物化石、白い部分は他の標本を参考に復元した部分。

研究者に聞いてみました!

1) 自身の研究内容と社会、一般との接点は 

地球上の生物は、過去5回の大量絶滅を生き延 びてきたと考えられています。鳥類以外の恐竜 たちが絶滅した約6600万年前の大量絶滅がもっとも最近のもので、現在、地球は第6回の大量絶滅期を迎えていると考えられています。人類 は恐竜の絶滅から学ぶことが必ずあるはずです。 

2) 研究する上での苦労や悩みなどはありますか

研究は頑張っても期待通りの結果が出るわけではありません。悩んだり苦しんだりしても、簡単にわかることよりも、苦労してわかることの 方がわかった時は嬉しいと思い、研究を続けることが大切だと思っています。

3) 今の職業に就いていなければ何をしていると 思いますか

大学で地学を専攻したのは、いろいろな所に旅行に行けそうだという不純な動機でした。旅 行に関係した仕事をしているかもしれませんね。

4) 座右の銘や本などがあればご紹介ください

座右の書というわけではありませんが、藤原正彦さんの「若き数学者のアメリカ」を大学4年生の時の1年間のカナダ留学中に読んで、外国で学ぶ日本人のひとりとして励まされました。勉強がさほど好きでもなかった私ですが、このときに、大学院進学を考えるようになりました。

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