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黒潮流域に生息する魚類の動物地理学的研究
東南アジアにおける魚類分類学の基盤構築支援
生物多様性情報データベースプロジェクトの推進

松浦 啓一

黒潮流域に生息する魚類の動物地理学的研究
黒潮は南方系の海産生物を南から北へ運ぶベルトコンベヤーです。しかし、黒潮にはもう一つの役割があったのです。浅海性魚類に関する最近の研究によって、黒潮が海中の見えざる障壁となっていることが分かりました。

太平洋側の12地点(赤丸)に見られる魚類の種組成を魚類写真データベース(62,665件の画像を収録)を使って比較しました。琉球列島と小笠原諸島は同じ緯度にあり、サンゴ礁が発達していますが、魚類の種組成は異なります。琉球列島は独自の魚類相をもっています(瀬能・松浦2007)。琉球列島は黒潮という強大な海流の障壁で囲まれているため温帯性魚類が本州や九州から琉球列島に南下できません。この仮説はDNAによる個体群解析によって確認されました。

温帯性のクロダイは本州から九州、そして中国大陸沿岸に分布するが、黒潮が障壁となり、琉球列島には分布しない。
熱帯域に生息するミナミクロダイは琉球列島に分布するが、九州、四国および本州には分布しない。


魚類写真資料データベースのハゼ科魚類11,142件のデータ(左)。サムネール(小さな画像)をクリックすると大きな画像を見ることができる。イチモンジハゼ(右上)とクビアカハゼ(右下)。

魚類写真資料データベースhttp://research.kahaku.go.jp/zoology/photoDB/
瀬能宏・松浦啓一. 2007. 相模湾の魚たち---ベルトコンベヤーか障壁か---.
『相模湾動物誌,国立科学博物館叢6』(国立科学博物館編), pp.121-133. 東海大学出版会, 東京.

東南アジアにおける魚類分類学の基盤構築支援
2003年から8年間、魚類分類学の講義や実習をワークショップ形式で行い、東南アジアの若手研究者育成を援助してきました。マレーシアのプトラマレーシア大学臨海実験所で2007年に行ったワークショップを紹介します。


東南アジアの魚類フィールドガイドを作成。ここに示したスラウェシ島のフィールドガイドでは、魚の説明を英語とインドネシア語で表記。当館のホームページからアクセスできるWEB版もある。
http://research.kahaku.go.jp/zoology/photoDB/
生物多様性情報データベースプロジェクトの推進
GBIF(Global Biodiversity Information Facility 地球規模生物多様性情報機構)の副議長として国際データベースプロジェクトを推進し、国内では当館が中心となっているサイエンスミュージアムネットS-net(39博物館、6大学が参加)の中心となって活動しています。
GBIF: http://www.gbif.org/
S-net: http://science-net.kahaku.go.jp/
GBIFポータルサイト(左)とオオハクチョウ(黄色点)の検索結果(右)

GBIFは全世界の標本や観察データなど生物多様性に関する2億件の情報を提供。

S-netポータルサイト(左)とチョウチョウウオ科の検索結果(右)

S-netは国内の標本データ(少数の観察データも含む)167万件を提供。

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松浦 啓一(まつうら けいいち)

松浦 啓一(まつうら けいいち)

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