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みんなが聞きたい ダイオウイカの話

窪寺 恒己

博物館でイカ・タコ類の研究をしていると、一番よく聞かれる質問がダイオウイカです。
どのくらい大きくなるの? どこにすんでいるの? 日本の近海にもいるの? 何を食べているの?
何年ぐらい生きているの? どこに行けば実物がみられるの? 様々な質問が寄せられます。
全てにお答えできませんが、世界各地の記録や文献、1998年より続けている日本産ダイオウイカ分類研究や小笠原深海カメラ調査を通じてわかってきた最新情報をお伝えしましょう。
ダイオウイカの大きさは?

動物ギネスブックによると、1939年ノルウェーの漁師が捕獲した体長(外套膜と腕の長さ)13m、触腕8.7mのものがマキシマム。
ちなみに日本近海のダイオウイカでは、体長5m前後が最大級?
ダイオウイカはどこにいる?

海岸に漂着したりマッコウクジラの胃袋から見つかった記録などをプロットしてみると、ダイオウイカはほぼ世界中の温帯海域から亜寒帯海域に広く分布していることが分かる。
しかし、実際に生息している水深や生態は謎に包まれていた。

最近、我々の小笠原近海で進めている中深層性大型頭足類調査により、ダイオウイカは水深650〜900mの中深層に生息し活発に摂餌していることが確かめられた。
ダイオウイカは何を食べている?

ニュージーランド近海のダイオウイカの胃内容を調べたフォルシュの結果。多くの個体で、ほとんど何も残されていなかった。そのうちの破片や鱗、イカ類の軟甲や顎板から査定できたもの。

甲殻類:コペポーダ(5種)
イカ類:ミナミニュウドウイカニュージーランドスルメイカ
魚類:ソコダラ科のオオメギンソコダラ・チゴソコダラ等、他不明数種。

同じ中・深層にすむ小型のイカ類や海底近くの魚類を捕食

ダイオウイカは何種類?
A. dux Steenstrup, 1857 西大西洋:腕・吸盤・口球
A. monachus Steenstrup, 1857 デンマーク:ビーク
A. bouyerii Cross & Fischer, 1862 マデイラ:記載・図
A. harveyii Kent, 1874 ニューファンドランド:触腕
A. proboscideus More 1875 アイルランド:手紙
A. sanctipaulii Velain, 1875 インド洋:触腕・ビーク
A. titan Steenstrup, 1875 ?
A. hartingii Verrill, 1875 ?:口球・吸盤
A. martensii Hilgendorf, 1880 日本:測定値・体各部
A. verrilli Kirk, 1882 ニュージーランド:ほぼ完全標本
A. stockii (Kirk, 1882) ニュージーランド:ほぼ完全標本
A. kirkii C.W. Robson, 1887 ニュージーランド:ほぼ完全標本
A. longimanus Kirk, 1888 ニュージーランド:ほぼ完全標本
A. physeteris Joubin, 1900 大西洋:外套膜・頭・腕
A. japonica Pfeffer, 1912 日本:完全標本
A. clarkei G.C. Robson, 1933 イギリス:ほぼ完全標本
A. nawaji Cadenat, 1935 フランス?:ほぼ完全標本
世界各地から17種、内3種(赤)が有効名とされていた。

1998年 E.C.Forchの衝撃的論文
フォルシュ(1998) はニュージーランド近海から得られた16標本(930-2140cm)を基に外部形態を詳細に検討した。その結果,南半球から報告されていたダイオウイカ4種は全て同一種であると結論した。
また,世界各地から報告された十数種におよぶダイオウイカのうち今まで有効名と考えられていた3種

A. dux (北西太平洋)
A.japonica (北太平洋)
A.sanctipaulii(南太平洋)

もこの変異範囲にはいるとして,ダイオウイカは世界で1科1属1種
Architeuthis dux Steenstrup, 1857 とすべきであると提案した。

ミトコンドリア・DNA COI:1276bp


当館には、地球館1Fサイズへの挑戦コーナーに実物の液浸標本が、海の多様性ホール天井にモデルのダイオウイカが展示されています。ぜひご覧ください。

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窪寺 恒己(くぼでら つねみ)

窪寺 恒己(くぼでら つねみ)

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