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 科学技術の中身に踏み込んだ科学技術史の研究が必要

田辺 義一
1.科学技術史・産業技術史の研究のねらいは?
人間社会におけるモノと情報の流れ 60億人以上の人口を抱える地球上の人間社会において、科学技術の発展なくして生存は望めません。特に、エネルギー・資源・環境を持続可能型に変換していくことが大きな課題です。そのためには、既存の科学技術・産業技術発展の歴史を調べ、未来を見通す必要があります。それが今求められている科学技術史・産業技術史の研究です。
このような目的を明確に持った若い人が、科学技術史研究に参加されることを望んでいます。
rc="imgs/02.gif" alt="火力用タービン発電機の大容量化の推移と対応技術" width="600" />

戦後の日本の産業発展に伴う電力需要の増加を支えたのは、火力発電機の大型化です。中でも一体型タービンロータの開発がキーで、それには鉄鋼の大型造塊技術(500t程度)が大きな役割を果たしました。高真空造塊や大型鍛造の技術開発が重要でした。
しかしこの技術が完成するまでには、ロータの破壊事故が多数起き、多くの犠牲が払われました。これらの事故の原因分析から、破壊力学が発展しました。現在もこれらをベースに多くの構造物の設計が行われています。
3.「破壊力学」の発展はまだ途上。

塑性破壊現象の理解の進展

しかし金属材料の破壊については、現在でも未解明の部分が多々あり、破壊力学の体系もまだまだ完成にはほど遠い感じです。理論上の問題と、破壊実験条件が厳しくそのため巨大な実験試料を必要とするといった問題点が指摘されています。現在30年程前に提案された破壊靱性の推定式を再検討していますが、理論体系に課題があるようです。
構造部材の設計は大変重要ですが、その根拠はまだ不確かなのです。 上:破壊したロータ破片、下:静かな港で突然破壊した船
4.材料を制するものは世界を制する。
人類の歴史は新たな材料の獲得と共に、不連続に発展してきました。プラスチックスや半導体は今の形で登場してまだ60年程度ですが、コンピュータをはじめ、生活のあらゆる場面で不可欠のものとなっています。しかし地球上の人口増加に対して、このままでよいのかという危惧は拭えないのも事実です。各人一人一人が考えていかねばならない課題です。持続可能な発展を可能とするエネルギー・資源・環境問題に対応できる材料や材料システムの開発が必要です。
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田辺 義一(たなべ よしかず)

田辺 義一(たなべ よしかず)

理工学研究部