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森の気象しらべ

菅原 十一
自然教育園
私は、自然教育園内の微気象及び水収支、大気汚染、酸性雨など生物をとりまく無機環境分野 の研究を担当しています。調査研究の成果は、自然教育園報告などを通して広く公開するとと もに、本園の自然林の維持管理、子供や大人を対象にした教育普及活動に活用されています。
日常業務として実施している「気象観測」は、1967年の観測開始当初より担当し、40年間の莫大な資料の蓄積があります。
都会の中のオアシス 都会の中のオアシス
東京では、都市化に伴い年々気温の上昇、湿度の低下現象が見られ‘東京砂漠’という言葉も生まれたほどです。一方、自然教育園で長年の気象観測結果、現在でも今から40年前の1960年代後半の東京の気温に近い値を維持しています。
例えば、真夏の日中の市街地では太陽が照りつけ気温が33℃以上になりますが、一歩園内の中へ入ると29℃前後でかなり温度差が感じられます。また、 湿度も森が深いため風が弱く、葉からでる水蒸気も多いので市街地よりも高く保たれています。
まさに、自然教育園は、都市の中に奇跡的に残された砂漠の中のオアシスといえるでしょう。
森の雨物語 森の雨物語
1970年代は、平年に比べ雨の少ない「から梅雨」の年が多くありました。この時、夏休みに入っても学校のプールが閉鎖されたり、都内の公園や街路の樹木に給水車が出動して給水するなど連日マスコミにも取り上げられました。しかし、自然教育園内では池の水が枯れることなく樹木への被害もありませんでした。
さすが園内の自然生態系はたくましいと実感しています。
手作り実験装置
自然教育園の森は雨が少なくても池の水が枯れることはありませんでした。森は雨水を一度に流さず、土の中に貯える「緑のダム」の働きをしています。森の木は、この土の中の水を根から吸収できるため雨不足になっても被害が出ないのです。しかし、これらの現象を野外で観察することは大変困難です。そこで、降った雨がどのように流れるかを実際に見ることのできる簡易雨水浸透実験装置を発泡スチロール製の魚箱で製作しました。草地や裸地、アスファルト地などにみたてた装置をいくつか用意し、実際にジョウロで上から水を流すと、環境により雨水の流れ方、水の濁り具合などの違いが目の前で確かめることができます。
私は、この他にも一般の人々に取り付きにくい無機環境の学習の時、より効果的な成果が得られる手作り道具の開発に力を注いでいます。その一部を下のケースに展示しました。
展示ポスターはこちらから
菅原 十一(すがわら とおいち)

菅原 十一(すがわら とおいち)

(退官)

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