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様々な微細藻類の採集方法

辻 彰洋

微細藻類は単細胞や群体性の小さな藻類で、様々な水域に生息しています。そのため、採集の方法も水域や目的に合わせ、色々な器具を使い分けて採集します。ここでは、私が行ってきた調査のいくつかをご紹介します。
1. 基本キット
私がいつも持ち歩いている道具です。@GPS(カーナビと同様の方法で採集場所を記録することが出来ます)、A簡易pH・電気伝導度・水温測定器(現場で簡単に珪藻の生育に影響を与える水質を測定できます)、Bプランクトンネット(浮遊性の珪藻を採集するための0.038mmの編み目のネットです)、CスプーンとDスポイト(石の上や泥の上の付着藻類を採集します)Eサンプル瓶と固定液(採集したサンプルが腐敗しないように固定液を加えます)
左:バイカル湖でのネットによる採集、中:阿寒湖の固有種のアナベナ(プランクトン藍藻:らせんの直径は0.1mm)、右:日吉ダムのペリディニウムによる赤潮(プランクトン渦鞭毛藻類: 直径0.05mm)
2. 海洋でのプランクトン調査
海洋のプランクトン濃度は、湖沼などの陸水に比べて低いため、海洋調査では大形のプランクトンネットを用います。
(夜間の手引きネット調査)
海洋は透明度が高く光が深くまで届くため、深いところでもプランクトンが生育可能で、プランクトンネットでの調査も深いところまで行います。そのような深いところの調査には、重い重りをつけて垂直に機械でネットを引き揚げます。
(NORPAC ネット)
深度別にプランクトンを調査する目的には水中の任意の深さで、船内からネットを開閉できる特殊なプランクトンネットも使われます。
(VMPS ネット)

本研究は北海道大学水産学部プランクトン研究室との共同研究の一環として、付属練習船おしょろ丸によっておこなわれました。

3. 潜水による付着藻類の調査
付着藻類は湖沼の光の届く深度の湖底にも生息しています。支笏湖のような貧栄養の湖沼には数十mの深さまで生息します。
潜水調査は、付着藻類が巻き上がりやすく、自由もきかないので大変です。調査は真冬にも行います。外気温は氷点下ですが、水中は3℃ぐらいです。
湖底で温泉が湧いているところは厚さ数cmの茶色い珪藻のマットが見られ、白く見える部分は珪藻が外部に分泌した多糖類の柄の塊です。

砂浜帯ではシャジクモに付着した珪藻(茶色くもやもやとしたもの)も見られます。
4. 濾過によるプランクトンの調査
プランクトンネットをすり抜けるような大きさのプランクトンを集めるには目の小さい特殊なフィルター(メンブランフィルター、穴径0.0012mm)を使って濾過をします。

この方法で集めたプランクトンを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると100 分の1 mm にも満たない微細な藻類の存在が分かります。また、微細な構造を詳しく観察することが出来ます。
色彩は人工彩色です。

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辻 彰洋(つじ あきひろ)

辻 彰洋(つじ あきひろ)

菌類・藻類研究グループ
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