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日本のアザミ−日本列島にアザミは何種あるのか−

門田 裕一
現在私が取り組んでいる研究テーマはとてもシンプルで。日本列島のキク科アザミ属には何種あるのか、というものです。日本産アザミ属に取り組んで20 年以上が経ちましたが。やっとその全貌が明らかになってきました。
ここでは最近になって存在が確認されたアザミをご紹介しましょう。

アザミとは?
アザミは日本の秋の山野を彩る代表的な植物です。北は北海道から南は南西諸島まで、
波が打ち寄せる海岸から高山の頂まで、水平的にも垂直的にも日本中至るところに生育しています。日本列島全体では約120 種のアザミが知られています。アザミ属は世界に約300 種あるとされていますので、世界の1/3 以上の種がこの日本列島に集中していることになります。因みに、『中国植物誌第78 巻第1 分冊(1987 年北京発行)』では、台湾を含めた中国全土で57 種があるとのことですので、日本にはその二倍の種が分布していることになります。
ワニツカアザミ(未発表) ワニツカアザミ(未発表)

宮崎県鰐塚山で最初に発見されたアザミ。宮崎県ではこれまでツクシアザミとされてきたものですが、花の咲く時期に大型の根生葉が残ることで明瞭に区別されます。
その後の調査で霧島山系でツクシアザミとされてきたものもこれに当たることが明らかになりました。独立種であることは明らかですが、和名をワニツカアザミにするかキリシマアザミにするか現段階では迷っています。
ウンゼンアザミ(未発表) ウンゼンアザミ(未発表)

左のワニツカアザミと同じく九州特産のアザミで、長崎県の雲仙山系と多良岳山系に特産します。ワニツカアザミと同じく九州に普通に分布するツクシアザミと混同されてきました。
花の咲く時期に大型の根生葉をつけ、大型の頭花を下向きにさかせるのか特徴です。
−次の3 種は国立科学博物館研究報告B 類(植物学)第33 巻1 号において発表される新種です−
リョウウアザミ(両羽薊) トガアザミ(戸賀薊) マミガサキアザミ(馬見ケ崎薊)
リョウウアザミ(両羽薊)
沿海地のアザミです。羽後(秋田県)と羽前(山形県)にまたがって分布するため、リョウウアザミと名付けました。花が上向きに咲き、花の咲く時期に根生葉が枯れていることが特徴です。
この地域に普通にあるナンブアザミと混同されてきたようです。高さ2mにもある巨大なアザミです。
トガアザミ(戸賀薊)
こちらも沿海地のアザミで、男鹿半島の特産植物です。オガアザミという和名は別のアザミに使ってしまいましたので、男鹿半島の地名である戸賀に因みました。こちらも花が上向きに咲き、花の咲く時期に根生葉が枯れていることが特徴です。このアザミもナンブアザミと混同されてきました。
マミガサキアザミ(馬見ケ崎薊)
頭花が小さく下向きに咲く、優しい感じのアザミです。産地の近くを流れる、最上川の支流である馬見ケ崎川に因んで和名をつけました。山形市と天童市の特産植物で、両市を合わせても100 個体に満たない、絶滅寸前のアザミです。このようなアザミがなぜ山形県の限られた地域にしか見られないのかは不明です。
展示ポスターはこちらから
門田 裕一(かどた ゆういち)

門田 裕一(かどた ゆういち)

陸上植物研究グループ

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