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 謎のニューカレドニア産シダ植物Rosenstockiaの正体を探る

海老原 淳
ニューカレドニアの植物
 南太平洋に位置するニューカレドニアは、固有植物の宝庫として有名です。約3000種の種子植物とシダ植物のうち、実に75%ほどが固有種であるという報告もあります(Jaffre他, 2001年)。長い年月他の大陸と陸続きにならなかったこと、超塩基性岩に代表される特殊土壌など、様々な要因が複合して現在の高い固有性が生み出されたと考えられているのです。

左から、ニューカレドニアの位置、ナンヨウスギ、唯一の寄生裸子植物、最も原始的な被子植物

霞を食べて生きるシダ---コケシノブ科

 私が最初の研究材料として選んだコケシノブ科は、コケのような小型の種が多く、シダとしては少し変わりものです。分類が諸説入り乱れていたこの仲間において、DNAの情報を利用して系統関係を再検討するのが私の最初の研究でした。

左から、コケシノブ科の葉、コケシノブ科に覆われる雲霧林

謎のコケシノブRosenstockia

 世界にはとても変わった形をしたコケシノブ科が何種か知られていましたが、その中で最も情報が乏しく、謎に包まれていたのが、ニューカレドニアで20世紀初頭に採集され、Rosenstockia rolandi-principisと名づけられていた種です。

Rosenstockiaのタイプ標本

パニエ山での調査

 2000年、我々はこのシダの唯一の産地である北部パニエ山において調査を実施しました。山頂付近の雲霧帯では、Rosenstockiaはふつうに見られる種であることがわかりました。

Rosenstockiaはパニエ山で生まれた!?

Rosenstockia

素朴な「なぜ」を大切に!
 小・中学校時代に科博の子供向け講座に参加したのをきっかけに植物の分類に関心を持つようになりました。 フィールドで生物を観察して気付いた素朴な「なぜ」を、自分の手で一つ一つ解き明かしていくことができる・・・これは分類学の最大の魅力だと思います。 今は、そんな「なぜ」を大切にしながら、主にシダ植物を材料に用いて、複雑な種の生物学的実体とその形成過程を研究しています。
展示ポスターはこちらから
海老原 淳(えびはら あつし)

海老原 淳(えびはら あつし)

植物研究部