博物館紀行


Database for Aquatic-vertebrate Science

ロシア科学アカデミー動物学研究所

執筆:篠原現人





ロシア科学アカデミー動物学研究所は国立の研究機関です。ここは別名動物学博物館ともよばれ、世界各地から動物標本を収集し、それらに基づき分類学や形態学を研究する機関です。

魚類研究室だけでも11人の研究者がいます。この研究室は深海魚の分類の第一人者のアンドリアシェフ博士がいたことで有名です。博士はすでに退官していますが、90歳の高齢にも関わらず、現在もなお週に2日間ほど研究室に通いながら論文を書いていました。他の研究室には更に高齢の方々が、博士と同様に自分の研究を続けているということです。まさに生涯現役研究者を実践しています。

この十数年間にロシアほど劇的に変化した国も珍しいと思います。この変化のため、この国は経済的に苦しい人たちが数多くいます。動物学研究所の研究者たちもその例外ではありません。しかし研究費や賃金がカットされているにもかかわらず、非常に辛抱強く、実直に研究を続けています。実力のある研究者が多いので、彼らにとって良い時代が早く到来することを願ってやみません。

ロシア科学アカデミー動物学博物館の展示は、一言でいうとコレクションの森といった感じがします。無脊椎動物から大型の哺乳類までの多種多様な標本や剥製が、やや薄暗い大きな部屋に大量かつ整然と並べられています。あちらこちらでボランティアと思われる若い人たちが、小学校高学年くらいの子供達十数人を連れて、展示物を丁寧に解説していました。またフロア内には標本・剥製以外に、非常に良く出来た小型〜中型のジオラマが設置され、来館者を楽しませています。説明はロシア語のみで書かれているために私にとっては眺めるだけの楽しみになってしまいました。ガラスケースの中には極めて精巧な剥製が随所にみられ感動しました。




ロシア科学アカデミー動物学博物館の展示