天然記念物の魚たち


Database for Aquatic-vertebrate Science

イタセンパラ・ミヤコタナゴ (種指定の天然記念物)

タナゴ類はコイ目の魚で二枚貝の中に産卵する習性をもっています。雌は産卵管を長くのばして出水管に差し込み、貝の外套腔内に卵を産みつけます。雄はそれと同時に入水管近くで放精し、卵を受精させます。タナゴ類は世界に約40種、日本に約15種います。天然記念物にはイタセンパラとミヤコタナゴの2種が指定されています。

イタセンパラは体長10cmに達する比較的大型の種で、濃尾平野、富山平野、淀川水系の3地域に生息し、流れがゆるやかで水草が繁茂する小川や池沼を好みます。イタセンパラの生息には、イシガイやドブガイなどが必要です。春に卵を産む他のタナゴ類と異なり、秋に産卵をおこないます。河川の水質悪化のため生息域が減少しています。富山県教育委員会は生息調査をおこない、その後氷見(ひみ)市教育委員会が保護増殖事業を展開しています。

ミヤコタナゴは体長3-4cmの比較的小型の種です。寿命は通常1-2年と短いです。マツカサガイなどに産卵します。生息地は栃木県、埼玉県、干葉県および神奈川県の丘陵地や扇状地周辺の湧水を基礎にした稲作地帯で、この環境は1950年代まではどこにでもありました。ミヤコタナゴが繁栄していた環境は人と自然とのかかわりによって生まれた自然である点は特筆すべき事柄です。生息数の減少の原因には河川工事、密漁、ブラックバスなど害敵の侵入、移入種タイリクバラタナゴとの競合などがあげられます。


イタセンパラ
写真提供:
滋賀県立琵琶湖博物館

ミヤコタナゴのオス:婚姻色
写真提供:藍澤正宏

ミヤコタナゴのメス
写真提供:藍澤正宏