泥をなめる


 海には大小の川が流れこんでいる。上流から運ばれてきた土砂は河口域で堆積し、次第に沖合へと押し出されてゆく。海からの波の作用も加わって、河口近くには平らな潟が形成される。川の流れによって運ばれてきた枯葉や小動物の死がいなどの有機物は次第に分解されて沈んだり、沖合に運ばれててゆくが、これらは大きさに応じて、さまざまな海の動物たちのえさとなる。水中のプランクトンは死ぬと海底に降り注ぐ。このマリンスノーが深海底まで沈むのには時間がかかるが、いつかは沈む。そして海底にすむ動物たちのえさになるのである。ナマコやクモヒトデは海底に降り積もったマリンスノーをえさとして生きている。えさを求めて動き回る必要はない。深海底は暗黒で、高圧で、低温の世界であるが、海底で泥をなめながら静かに生活している動物たちにとっては、われわれが考えるほど厳しい環境ではないようである。

 写真:チゴガニ Iyoplax pusilla (de Haan) (撮影:楚山 勇)
 チゴガニは巣穴の周囲、直径30cmほどの広さをテリトリーにしている。巣穴の近くでえさを食べはじめテリトリーの縁まで進み、これを繰り返すから、砂ダンゴは巣穴を中心に放射状に残される。


| 第五章 | 岩をかじる | ひろって食べる
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このページは、 2000/09/09に制作されました。
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