ハネカクシ談話会ニュース No. 3
The Newsletter of the Staphylinidological Society of Japan, No. 2

1997年12月15日発行
The Newsletter of the Staphylinidological Society of Japan,No.3
ハネカクシ談話会ニュース No. 3

1.事務局からの連絡
 ハネカクシ談話会は、本年末で発足から丸1年経過したわけですが,短期間 で,会員数49名をかかえる談話会となりました.しかも,後でお知らせしますように,関西支部が発足する運びとなり.会はきわめて順調に発展しています.
 (1).会費納入状況:まずは,1997年12月13日までに,会員の方(50音順)から収められた年会費について、ご報告申し上げます.
(以下省略)
 以上、現在までに収められた会費について、報告致しましたが,何か御不明な点がございましたら、事務局までご連絡ください.なお,1998年度の会費未納の方は.できるだけ早く.事務局へ80円切手6枚(480円分)を収めてくださるよう御願い致します.
 (2).ハネカクシ談話会第2回採集会の報告:第2回採集会は,10月11-12日に,栃木県栗山村奥鬼怒で行われました.参加者は,以下の8名(50音順) でした:上田 康之;寺沢 英三;直海 俊一郎;西川 正明;野村 周平; 平野 幸彦;丸山 宗利;渡辺 嵩.金曜日からの宿泊組もあったのですが, その日(連休第1日日)の人出はすさまじく,目的地に着くのがやっとと言う 有様でした.土曜の夜は、野村さんによるスライドを皆で見ては歓談し,日曜 日は、川俣湖近くの沢に入り,それぞれに収穫をあげていたようです.スナッ プ写真は上田さんから御提供いただいたものです.記してお礼申し上げます.
 (3).1997年に発表した論文.報文.記録報告等のとりまとめについて: ハネカクシ談話会会員が1997年に発表したハネカクシに関する論文.報文.記録報告などを、各年度ごとにまとめて,各人の研究のための情報バンクにしたらどうかという案が野村さんから出てきました.全く素晴らしい案でして,即実行しようということになりました.4号のニュースに載せる予定ですので,1月末までに、該当する論文.報文.記録報告などを、下記の住所へお送り下さい.別刷りあるいは複写したものを各1部ずつ送って頂くのが最高ですが,タイトル.掲載された雑誌名.巻(号),ページ,著者名,発表年度等を記したリストを送ってくださっても結構です.宜しく御願い致します.

〒169 東京都新宿区百人町3−23−1
国立科学博物館昆虫第2研究室
野村 周平(TEL:03−3364−7126)

2.ハネカクシ談話会関西支部の発足
 6月に兵庫県川西市に在住の林さんから,ハネカクシ談話会の関西支部を開 いたらどうかとというお手紙をいただきました.例会や採集会が(今の所)関 東周辺で行われているので.遠方の人はそれらになかなか参加できないからだ そうです.これも全くその通りでして,事務局で検討して.即実行することと 致しました.直海は11月に川西市と八幡市を訪れ 林靖彦さんや伊藤建夫さ んらと,関西支部の構想について話を重ね、めでたく関西支部発足となりまし た.支部の名称,発足日を次のように決めましたので,お知らせ致します.
 ハネカクシ談話会関西支部: The Staphylinidological Society of Japan, Kansai Branch
 発足日:1998年1月1日
 関西支部の例会や採集会等の活動については,事前にハネカクシ談話会ニュ ース誌上にてご連絡致しますので,興味をもたれた方は.参加の事など.関西 支部事務局までお問い合わせください.
(1).ハネカクシ談話会関西支部発足例会のご案内
日時:1998年1月15日午後1時
場所:大阪市立自然史博物館
 林さんからのご連絡によりますと.話題提供など決っていないとのことです が,ハネカクシに興味をもたれている関西周辺のかたは.参加されてみては如 何でしょうか?興味をもたれた方は,ひとまず.川西市の林さんにご連絡くだ さい.林さんの連絡先は,ニュース末の枠内をご覧ください.
 関西支部幹事の御紹介:林靖彦さん(右)と伊藤建夫さん(左)です.宜しく御願い致します.林靖彦さんは,大きくて美しいハネカクシ亜科ハネカクシ の高次分類学的研究を中心にハネカクシの研究を続けておられます.また,林 さんは,チビシデムシ類やLathrobium属の研究もされています.他方 伊藤建 夫さんは,Nazeris属やLobrathium属やAstenus属など.中型でやはり美しめの アリガタハネカクシ亜科ハネカクシの分類を中心に,ハネカクシの研究を手掛 けておられます.

3.現在欧米で日本産ハネカクシを誰が研究しているのか?
 ヨーロッパや北米の研究者は.自分の研究群としてまず小さな属(科や亜科 ではない)をとりあげますが,その属については全世界の種を対象とすると言 うまったく正しいやり方で,ハネカクシを研究する人が少なくありません.そ う言う人は,当然当該属の日本産種にも興味を持っています.現在,少なから ぬ国外の研究者が,日本のハネカクシについて研究を進めていますが,私の聞 き知っている限りの情報を以下にお知らせ致します.
 (1).シカゴ(U.S.A.)のM.Thayerさんは,世界中のOmaliini族(ヨツメハネカクシ亜科)の属の再検討をされていますが,日本の属についても,変更等がなされる可能性があるでしょう.しかし,ティヤーさんからの手紙によりますと,まだまだ公表までは時間がかかりそうとのことです.
 (2).ベルリン(ドイツ)在住のM.Schuelkeさんは,シリホソハネカクシ亜科ハネカクシに興味をもたれ この亜科のハネカクシの研究を手広く押し進めておられますが,日本産に関しては,Bolitobius prolongatus(アカチャキノコ ハネカクシ)種群を研究されているようです.この種群からは,まだ新種がで るでしょう.
(3).プラハのM. Kocianさんは,Mycetoporus/Ischnosoma属(シリホソハネカクシ亜科)の全世界の種の研究に取り組んでおられます.最近,旧北区西部の種についての論文が公表されたと聞いていますが.まだ,入手していません.
(4).サンクト.ペテルスブルグ(ロシア)のV. Gusarovさんは,数年前に英国に留学されたときに.日本産のDomene属(アリガタハネカクシ亜科)の研究を終了!されました.彼は私の標本を全て検鏡して,幾つか新種を発見されました.私の標本には,すでに,holotypeのラベルがついた標本も含まれています. しかし.その後の連絡では、彼は東南アジア産のSepedophilus属(シリホソハ ネカクシ亜科)の研究をやっていると言うことです.Domene属の研究の公表を 早くみたいものです.
(5).ハノバー(ドイツ)のV. Assingさんは,ごく最近ハネカクシの分類の論 文を発表され始めたにもかかわらず,ものすごい勢いで.色々なハネカクシの 分類学的研究を展開されています.そのなかで私のお勤めは,「A revision of the species of the Subfamily Habrocerinae(Coleoptera:Staphylinidae)of the world,Revue suisse de Zoologie,1995,102(2):307−359」というHabrocerinae亜科に属する世界中の種をまとめあげたものです.なぜ,この 論文がお勧めかと言うと,日本からこの亜科のハネカクシが発見されておらず, 1日も早い発見が期待されるからです.Habrocerus属ハネカクシは絶対日本に いると私は信じています!
 彼は.また現在,東アジアのOthius属(ハネカクシ亜科)の再検討を手掛け られています.日本からもまだいくつか新種が出るでしょう.
(6).カンサス(U.S.A.)のK. Ahnさんは,Liparocephalus属(ヒゲブトハネカクシ亜科)を再検討されました:「A review of Leparocephalus Maeklin (Coleoptera:Staphylinidae:Aleocharinae)with descriptions of larvae, Pan-Pac. Ent., 1997,73(2):79−92」.日本産種としては,Liparocephalus tokunagai Sakaguti.1944が取り上げられていました(分布:本州:Aburatsubo Beach,Miura,Kanagawa;九州:Kekura.Kagoshima)
(7).ベルリン(ドイツ)のM.Uhligさんは,日本産のErichsonius属の補足的研究をされていますが,博物館での標本キュレーティングで忙しいとの事で, 発表までいましばらく,かかるとの事です.
(8).前回のニュースで,フィレンツェ(イタリア)のA. Bordoniさんが,日本 産のXantholinini族(ハネカクシ亜科)について論文発表されると記しました が,公表されましたので(A Revision of the tribe Xantholinini from Japan ,1:Jpn.J.Syst.Ent.,1997,3(2):167−179),その結果をお知らせ致します.なお.括弧内の数字は原色甲虫大図鑑,(保育社)の図版番号です.
1.Zeteotomus maximus(Bernhauer)ズナガホソクビハネカクシ(51-1)
 再記載されて.交尾器等が図示されています.
2.Xantholinus pleuralis Sharpクロバネナガハネカクシ(51−8)
 属名変更:Nudobius pleuralis(Sharp).
3.Xantholinus punctiventris Sharp
 属名変更:Liotesba punctiventris(Sharp)
 本種は,Ichiuchi.Japanから発見された種で,現時点では雄の記録はないと の事です.
4.Xantholinus tubulus Sharp ホソガタナガハネカクシ(51-7)
 属名変更:Hypnogyra tubulus(Sharp)
5.Hypnogyra tenebrosa Bordoni, 1997
 新種記載:横浜から採集された雄がholotypeとなっています.
6.Xantbolinus suffusus Sharp キバネナガハネカクシ(51-6)
 属名変更:Lepidophallus suffusus(Sharp)
7.Xantholinus japonicus Sharpオオキバネナガハネカクシ(51-5)
 属名変更:Lepidophallus japonicus(Sharp)
8.Xantholinus mixtus(Sharp)
 属名変更:Lepidophallus mixtus(Sharp)
 雄交尾器等が図示されています.
 (9).シェリッツ(ドイツ)のV. Puthzさんは,日本産のStenus indubius種群(メダカハネカクシ亜科)の研究を手掛けておられます.この種群では,構成種の外見だけではなく雄交尾器も,互いに非常に似ているので,分類は困難を極めます.早く結果が公表されることを願っています.

4.国外からハネカクシ談話会宛に届いた手紙2通
 2名の方から,ハネカクシ談話会発足の祝いのお手紙が届いていますので, 以下に紹介致します.
 A. Smetanaさん(Agriculture and Agrifood Canada,Ottawa):「ハネカクシ談 話会を始めようというアイデアはとても素晴らしいことだと思います.直海と 野村の両氏におめでとうといいたい.なんて素晴らしいアイデアなんだ!」
 A. F. Newtonさん(Chicago,Field Museum):「日本にハネカクシ談話会ができたそうですね.おめでとうございます.でも、ハネカクシに興味をもつ人が日本に多いのには驚きました.しかも.ヒゲブトハネカクシ亜科ハネカクシの研究者が3人もいるのは,すごいですね.」

編集後記:今年は,ハネカクシ談話会の発足の年でしたが,関西支部の発足も めどがたち,一安心しているところです.今年は,ニュースを3回発行して, 例会1回.採集会1回という結果となりました.ハネカクシ談話会は,まだ組 織として不十分なところもありますが,あまり焦らず,ゆっくりやっていきた いと思いますので.会員の皆様のご協力とご理解のほど,宜しく御願い申し上 げます.

 ハネカクシ談話会ニュースNo.3(1997年12月15日発行)
             発行責任者:直海 俊一郎
  事務局:〒260 千葉市中央区青葉町955−2 千葉県立中央博物館
    直海 俊一郎(TEL:043−265−3274;Fax:043:266−2481)
 ハネカクシ談話会幹事(中央博:直海俊一郎);(科博:野村周平)
    関西支部事務局:〒666−01兵庫県川西市水明台3−1−73
            林 靖彦(TEL:0727−93−3712)
     関西支部幹事(川西市:林靖彦);(八幡市:伊藤建夫)



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