ハネカクシ談話会ニュース No. 15
The Newsletter of the Staphylinidological Society of Japan, No. 15

2001年12月15日発行
The Newsletter of the Staphylinidological Society of Japan
ハネカクシ談話会ニュース No. 15
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ハネカクシ談話会第6回例会の報告
 第6回例会は2001年6月24日,神奈川県厚木市の東京農業大学厚木キャンパスで行われました.交通が不便ですから,どれだけ参加いただけるか大変心配しました.しかし,農大の学生さんが多数参加下さった他,徳島からは吉田正隆氏が遠路来訪され,会は大変盛り上がりました.参加者は以下の12名でした.
 参加者:西川正明,平野幸彦,豊田浩二,長島聖大,新井志保,吉田進,吉田正隆,岸本年郎,野村周平(以上会員);田島晴巳,石川忠,川島逸郎(以上会員外).(順不同,敬称略) (野村記)

講演要旨

(1) 岸本年郎(東京農大):真洞窟性ハネカクシ
 ニュース14号(p.7-8)のレビュー「真洞窟性ハネカクシ」(岸本,2001)を参照.

(2) 新井志保(東京農大):埼玉県のアリヅカムシ相
 埼玉県からはこれまで22属24種のアリヅカムシが記録されていた.演者は県内85地点において採集された標本を検し,36属82種を確認した.これらに既知の記録を合せた結果,現時点で埼玉県産アリヅカムシ相は39属85種(未記載種を含む)からなることを確認した.これらのなかには日本から正式な記録がなかったOdontalgini族,本州初記録となるRybaxis lamellifera,東日本初記録となるBythiotes sp.が含まれる.
 今回,埼玉県のアリヅカムシ相と,山形,福島,神奈川,愛媛の各県のアリヅカムシ相を,種構成の点から比較した.Jaccardの共通係数,正宗の相関率,Sorensenの類似係数,野村・シンプソン指数の4種類の類似度指数を用いて比較した結果,どの指数を用いても神奈川県との類似度が最も高かった.2番目に類似度が高かったのは,3つの指数で福島県,野村・シンプソン指数で山形県であった.この結果は地理的な近さとよく一致し,関東地方中央部の特徴をよく反映していると考えられる.

(3) 野村周平(国立科博):日本およびその周辺のヒゲブトアリヅカムシはどこまでわかったか?
 日本からは現在,未発表の種を含めて5属11種6亜種のヒゲブトアリヅカムシが知られている(下のリストを参照).今回これらのアリヅカムシの分類,分布,生態などが,どの程度まで解明されているかを報告した.また,台湾,中国,ベトナムなど近隣地域でそのファウナ解明度や今後の予測についても解説した.
 日本産ヒゲブトアリヅカムシ上族の種のリスト(*印は未発表)
Supertribe Clavigeritae ヒゲブトアリヅカムシ上族
 Tribe Clavigerini ヒゲブトアリヅカムシ族
  Genus Diartiger Sharp ヤマトヒゲブトアリヅカムシ属
1.   D. fossulatus Sharp コヤマトヒゲブトアリヅカムシ
1-1.  D. f. fossulatus Sharp 原名亜種:北海道南部,東北地方,関東地方
1-2.  D. f. ispartae (Karaman) 中部近畿亜種:中部地方,近畿地方
1-3.  D. f. izuinsulicola Nomura 伊豆諸島亜種:伊豆神津島,利島*
1-4.  D. f. morimotoi Nomura 西日本亜種:中国地方,四国,九州北部
1-5.  D. f. imasakai Nomura 島原半島亜種:九州島原半島
1-6.  D. f. hirashimai Nomura 南九州亜種:九州南部
1-7.  D. f. dentipes Nomura et Lee 韓国亜種:四国西部;韓国,済州島
2.   D. spinipes Sharp ヤマトヒゲブトアリヅカムシ:九州南部
3.   D. kubotai Nomura クボタヤマトヒゲブトアリヅカムシ:本州,四国,九州
4.   D. japonicus (K. Sawada) ヒメヒゲブトアリヅカムシ:本州,四国,九州
5.   D. sp. :伊豆御蔵島
  Genus Micrelytriger Nomura コバネヒゲブトアリヅカムシ属
6.   M. mirabilis Nomura コバネヒゲブトアリヅカムシ:屋久島,奄美大島
7.   M. nakatai Nomura オキナワコバネヒゲブトアリヅカムシ:沖縄本島
  Genus Articerodes Raffray シマヒゲブトアリヅカムシ属
8.   A. sp. 1 クロサワヒゲブトアリヅカムシ(投稿中):小笠原母島,弟島
9.   A. sp. 2 オガサワラヒゲブトアリヅカムシ(投稿中):小笠原母島
  Genus Triartiger Kubota ミフシヒゲブトアリヅカムシ属
10.  T. reductus Nomura ツシマミフシヒゲブトアリヅカムシ:対馬
Genus Anaclasiger Raffray 和名なし
11.  A. sinuaticollis Raffray? ヒゲブトアリヅカムシ:九州南部*,薩南諸島*;シンガポール


 カタログ紹介
Lee. H. Herman. 2001. Catalog of the Staphylinidae (Insecta: Coleoptera): 1758 to the end of the second millennium. Bulletin of the American Museum of Natural History, (265): 1-4218.
 大きなダンボールに何かがアメリカ自然史博物館から私宛てに送られてきた.標本にしては重過ぎると思った.それを開けてみたら,何と7冊4218ページ(!)からなるハネカクシのカタログであった.このカタログはハネカクシ研究者にとって必須の最重要文献になる.しかし,今回のニュースではスペースの関係上,詳しく取り上げることはできなかった.このカタログでは,1758年から2000年までに記載・記録されたハネカクシ731属17,861種が取り上げられている.ただし,ヒゲブトハネカクシ亜科,アリガタハネカクシ亜科,アリヅカムシ亜科,デオキノコムシ亜科の4亜科は取り上げられていない.1冊目では,ハネカクシ研究の歴史が詳しく論じられ,顔写真を入れたハネカクシ研究者の伝記もあるので,読み物としても非常に楽しめる.たとえば,M. Bernhauerが5251新種,M. Cameronが4136新種を記載した,というようなこともわかる.


 ハネカクシのリストを作成するとき,亜科の配列はどうすればよいか?(2)

 直海 俊一郎 (千葉県立中央博物館)

 ニュース14号に引き続き,ハネカクシの亜科の配列を論じたい.本稿ではセスジハネカクシ群とハネカクシ群に含まれる亜科の配列について論じる.
III. Oxytelinae group セスジハネカクシ群
[Trigonurinae 和名なし]
 この亜科に含まれる属.Trigonurus(ヨーロッパ,コーカサス,北アメリカ)だけ.
 所見.幼虫の形態などからすると,この亜科のハネカクシは,セスジハネカクシ群のなかで最も原始的である.日本からは,採集されないであろうか?
 参考文献(Trigonurinae亜科)
Blackwelder, R. E. 1941. A monograph of the genus Trigonurus (Coleoptera: Staphylinidae). Amer. Mus. Nov., 1124:1-13.

9.Apateticinaeオサシデムシモドキ亜科
 この亜科に含まれる属.ApateticaおよびNodynus (アジア).
 所見.この亜科の分布圏は,上述の通りアジアである.Zercheさんは,日本産のApateticaの新種を持っているといったので,彼が新種という標本をベルリンで見せてもらったが,私には差異がわからなかった.そこで,帰国後,手元にあるさまざまな地域で得られたオサシデムシモドキの交尾器を慌てて抜いて,それらを比較してみたが,地域変異は殆どなかった.あの標本はおそらく新種ではあるまい.

10.Scaphidiinaeデオキノコムシ亜科
 代表的な属.Baeocera, Cerambyciscapha, Cyparium, Scaphobaeocera, Scaphidium, Scaphisoma, Scaphidium, Toxidium,他.
 所見.かつて独立の科として扱われていたデオキノコムシも,現在ではすっかりハネカクシの1亜科として定着したようだ.幼虫形態に基づいてデオキノコムシをハネカクシの亜科として最初に認めたのが,Kasule(1966)であるということを,ここでは紹介しておきたい.ちなみに,Kasuleさんは,グラスゴーのCrowson博士のもとでハネカクシなどの幼虫形態を研究されたインドの昆虫学者であると伝え聞いている.
 参考文献(デオキノコムシ亜科)
Lobl, I. 1997. Catalogue of the Scaphidiinae (Coleoptera: Staphylinidae). Instrumenta biodiversitatis, I. 190pp. Museum d’histoire naturelle, Geneve. 11.Piestinaeヒラタハネカクシ亜科
 この亜科に含まれる属.Piestoneus, Siagonium, 他5属.
 所見.日本産のヒラタハネカクシ亜科は2属からなり,分類学的研究は一応終わっている.
 参考文献(ヒラタハネカクシ亜科)
Naomi, S. 1995. Revision of the subfamily Piestinae (Coleoptera: Staphylinidae) from Japan, I. Nat. Hist. Res., Chiba, 3(2): 141-151.

12.Osoriinaeツツハネカクシ亜科
 代表的な属.Borolinus, Clavilispinus (=Paralispinus), Lispinus, Nacaeus, Neolosus, Osorius, Priochirus, Thoracophorus, 他.
 所見.この仲間は,腹部の背板と腹板が完全に癒合して筒状になっているという点から,ツツハネカクシと呼ばれている.日本からは,新記録の属ならびに新種がまたいるようだ.また,Clavilispinusは小笠原諸島や南西諸島に分布する南方に分布するハネカクシであるが,日本産のこの属のハネカクシはおそらく数種に分類できそうである.
 参考文献(ツツハネカクシ亜科)
Naomi, S. 1986. Taxonomic study on the subfamily Osoriinae (Coleoptera, Oxyporidae) from Japan, I. Elytra, Tokyo, 14(2):33-42.

13.Oxytelinae セスジハネカクシ亜科
 代表的な属.Anotylus, Bledius, Carpelimus, Coprophilus, Deleaster, Oxytelus, Platysthetus, Syntomium, Thinobius, Thinodromus, 他.
 所見.亜科の定義については,Herman(1970)を参照.日本では,分類学的研究が遅れた亜科の一つである.ロンドン自然史博物館のHammondさんは,日本のOxytelus,AnotylusとPlatysthetusの分類学的研究をしたいと,20年ほど前に京都で会ったときに言っておられたが,その後どうなったのだろう.いずれにせよ,ロンドンに行くと,日本産のこれらの属のハネカクシは,(標本箱のなかだけで!)シノニム処理など概ね終えた形で配列されている.

IV. Staphylininae-group ハネカクシ群
14.Oxyporinae オオキバハネカクシ亜科
 この亜科に含まれる属.OxyporusとPseudoxyporus?(ヨーロッパ,アジア,北アメリカ,中央アメリカ).
 所見. Nakane and Sawada (1956)は,Oxyporus属の1新亜属Pseudoxyporusを設けた.その後,Campbell(1969)が,Pseudoxyporus属をOxyporus属の亜属にしたのであるが,現在でも属名Pseudoxyporusは,日本国内では普通に用いられている.私がカナダに行ったとき,CampbellさんにPseudoxyporusを亜属に格下げした理由を尋ねたことがあるので,彼のラフな見解を紹介しておこう.「なぜ,亜属におとしたの?」と聞いたら,Campbellさんは,「属というのは,野外で虫をぱっと見たとき,ちょっと感じが違う虫に対して設けるもんじゃないかなあ?」.だったらAthetaのような小型のハネカクシの近縁の属はどうなるのと思ったが,追求はしなかった.もちろん,彼が格下げした理由はこれだけではないのだろうが,Oxyporus/Pseudoxyporusの属/亜属の問題が解決されていないようなので,それについての更なる研究が必要であろう.
 日本産のオオキバハネカクシ亜科は,Nakane and Sawada (1956)によって,まとめられたと思っていたところ,最近になって,北海道からShibata(1997)によって1種,Pseudoxyporus cyanipennis (Kirschenblatt)が発見され,報告された.和名をルリバネオオキバハネカクシというが,実に美しい種である.また,Ito(1999)によっても,四国から1新種(Pseudoxyporus masatoi)が記載された.あと2,3の新種が出るかもしれない.
 参考文献(オオキバハネカクシ亜科)
Ito, T. 1999. A new species of the genus Pseudoxyporus from Japan (Coleoptera, Staphylinidae). Jpn. J. syst. Ent., 5(2):255-258.
Nakane, T. and K. Sawada. 1956. A revision of the subfamily Oxyporinae in Japan (Coleoptera: Staphylinidae). Sci. Rep. Saikyo Univ., Kyoto (Nat. Sci. & Liv. Sci.), 2A:116-126.
Shibata, Y. 1997. A redescription of Pseudoxyporus cyanipennis (Kirschenblatt) (Coleoptera, Staphylinidae) from Hokkaido, Japan. Elytra, Tokyo, 25:509-514.

15.Megalopsidiinae メダカオオキバハネカクシ亜科
 この亜科に含まれる属.Megalopinus (全世界に分布)だけ.
 所見.日本からは,現在4種知られている.
 参考文献(メダカオオキバハネカクシ亜科)
Naomi, S. 1986. A taxonomic study on the subfamily Megalopininae (Coleoptera,Oxyporidae) of Japan, with descriptions of two new species. Kontyu, Tokyo, 54(2):344-352.

16.Steninae メダカハネカクシ亜科
 この亜科に含まれる属.Stenus,Dianous, それから未記載の1属.
 所見.この亜科の第3属めのハネカクシが,オーストラリアから発見されている.この新属のハネカクシは,StenusとDianousの中間的な形態を持っている.つまり,Dianousのようなあまり大きくない複眼とStenusのような長い下唇前基節を合せもっているのである.日本産メダカハネカクシは現時点で,207種であるが,あと100種は新種が発見されそうである.
 参考文献(メダカハネカクシ亜科)
Naomi, S. 1988. Studies on the subfamily Steninae from Japan I. New or little known species of the genus Dianous Leach (Coleoptera: Oxyporidae). Trans. Shikoku ent. Soc., 19(1/2):47-54.

17.Euaesthetinae チビフトハネカクシ亜科
 代表的な属.Edaphus, Euaesthetus, Octabius, Stenaesthetus,他.
 所見.大変小さいハネカクシで,日本のファウナは殆ど判っていない.日本産未記録属であるOctabiusが,四国,南西諸島から記録されている(未発表).しかも,2種(1種は有眼種;もう1種は無眼種).
 参考文献(チビフトハネカクシ亜科)
Puthz, V. 1980. Beitrage zur Kenntnis der Euaesthetinen XXXI. Vier neue Edaphus-Arten aus Japan (Staphylinidae, Coleoptera). Philippia, 4(3):241-245
Puthz, V. 1986. Beitrage zur Kenntnis der Euaesthetinen XLIII. Zwei neue orientalische Stenaesthetus-Arten (Staphylinidae, Coleoptera). Philippia, 5(4):297-300.

(Leptotyphlinae ツチハネカクシ亜科)
 代表的な属.Entomoculia, Leptotyphlus, Megatyphlus, Neotyphlus,他.
 所見.この亜科のハネカクシは真性深層土壌性ハネカクシであり,複眼が退化している.日本からは,かつてSawada(1971)によって,この亜科のハネカクシ(Yosiityphlus kuroshio)が記載されたが,記載された形態から考えて,この種はツチハネカクシに属するものではないようだ.(いずれにせよ,沢田先生が日本からこの微細なハネカクシを発見・記載されたことは,ファウナ解明への素晴らしい貢献であることには違いない!;念のために)たとえば,ツチハネカクシでは,腹部は先端にいくにしたがい幅広くなり,雌の腹部先端節は,他の亜科には決して見られない特有の器官を具えるが,Yosiityphlusでは腹部先端節は小さく,その雌にツチハネカクシ特有の器官がない.その種はセスジハネカクシ亜科のThinobius属(あるいはこの属に近縁のもの)に属する無眼種であると考えられている.そこで,現時点ではツチハネカクシ亜科は,実質的に日本から記録がないものとしておいてもかまわないであろう.
 ただし,ツチハネカクシ亜科が本当に日本にいるかどうかという問題は,もちろん上の問題とは別である.この亜科のハネカクシは,ヨーロッパ,南北アメリカ,オーストラリア,パプアなど隔離的ではあるが広く分布しているので,むしろ日本にいてもちっともおかしくないのである.このハネカクシは日本にいるが,私たちが採集法を知らないために採れないだけかもしれない.というのは,このハネカクシはとても小さいばかりでなくとても細いので,野外におけるふるい法はいうまでもなく,通常のベルレーゼ装置でも採集できないらしいからである.このハネカクシの採集は,したがって,採集法をよく学ぶことから始めなければならないということになる.イタリアのPaceさんなど,ツチハネカクシのことをよく知っている研究者(Pace,1996を参照)のところにいって,実際あちらで本当のツチハネカクシを採集するという経験を積む必要があるような気がする.このハネカクシが日本から採集されたら,皆でお祝いしましょう.
 参考文献(ツチハネカクシ亜科)
Sawada, K. 1971. On the new genus and species of Leptotyphlinae of Japan (Coleoptera, Staphylinidae). Rev. Ecol. Biol. Sol, 8(2):327-330.

18.Pseudopsinae スジヒラタハネカクシ亜科
 この亜科に含まれる属.Pseudopsis (全北区,南アメリカ,ニュージーランド),他,3属.
 所見.Herman(1975)がこの亜科のきわめつけの論文である.この亜科の分類学的位置は,これまで非常に不安定であったが,現在はアリガタハネカクシ亜科やハネカクシ亜科に近いとされている.
 参考文献(スジヒラタハネカクシ亜科)
Herman, L. H. 1975. Revision and phylogeny of the monogeneric subfamily Pseudopsinae for the world (Staphylinidae, Coleoptera). Bull. Amer. Mus. nat. Hist., 155:241-317.

19.Paederinae アリガタハネカクシ亜科
 代表的な属.Astenus, Cryptobium, Domene, Echiaster, Lathrobium, Medon, Ochthephilum, Oedichirus, Paederus, Palaminus, Rugilus (=Stilicus), Scopaeus, Stiliderus, Sunius, 他.
 所見.属/族レベルの分類がすんでいないが,Hermanさんがこの困難な仕事に取り組んでおられるらしい.日本についていえば,この亜科のファウナはよく判っていない.Lathrobiumだけでも,200〜300種はいるみたいで,この亜科の研究もまだこれからである.
 参考文献(アリガタハネカクシ亜科)
安立綱光.1955.日本産アリガタハネカクシ亜科の分類学的研究.東洋大学紀要,(7):11-36.

20.Staphylininae ハネカクシ亜科
 代表的な属.Anisolinus, Atanygnathus (=Tanygnathus), Atrecus (=Baptolinus), Cafius, Craspedomerus, Creophilus, Diochus, Erichsonius, Gabrius, Leptacinus, Ocypus, Platydracus, Quedius, Staphylinus, Xantholinus, 他.
 所見.この亜科は,これまで非常に細分されていたが(Amblyopininiae, Diochinae, Platyprosopinae, Quediinae, Xantholininae, Xanthopyginae),幼虫・成虫形態ばかりでなく,蛹の特異な形態などから考えて,Xantholininaeを含む広義のStaphylininaeが,最近では広く受け入れられているようだ.
 参考文献(ハネカクシ亜科)
Hayashi, Y. 1993. Studies on the Asian Staphylinidae, I (Coleoptera, Staphylinidae). Elytra, Tokyo, 21(2):281-301.
Smetana, A. 1995. Rove beetles of the subtribe Philonthina of America north of Mexico (Coleoptera: Staphylinidae) classification, phylogeny and taxonomic revision. Mem. Ent. Int., Volume 3. Associated Publisher, Gainesville.
Smetana, A. 2000. Reclassification of the north temparate taxa associated with Staphylinus sensu lato, including comments on relevant subtribes of Staphylinini (Coleoptera: Staphylinidae). Amer. Mus. Nov., (3287):1-88.

 以上,Lawrence and Newton(1995)に基づいて,ハネカクシの亜科の配列について見てきた.現在のハネカクシ科の亜科の配列は20年前のそれと比べると,随分変ってしまったといってよいであろう.しかし,Lawrenceらの高次分類体系は,骨格がかなりしっかりしているので,基本システムとして受け入れてよいと私は認識している.
 近年,地方同好会の会員の活動が活発で,各地の同好会報などにハネカクシのリストが頻繁に発表され,地域のハネカクシ相が急速に解明されつつある.同時に,公的機関が音頭をとったプロジェクトの結果としての昆虫リストが,県や市町村単位で,素晴らしい単行本として出版され,行政区画単位のハネカクシ相もそのような本の中で体系的に公表されつつある.本稿で紹介した合理的で情報量に富む亜科の配列が,今後そのようなハネカクシ研究におけるリスト作成に利用されることを願っている.

 引用文献
Campbell, J. M. 1969. A revision of the New World Oxyporinae (Coleoptera:Staphylinidae). Can. Entomol., 101(3): 225-268.
Crowson, R. A. 1981. The Biology of the Coleoptera. Academic Press, London.
Hammond, P. M. 1975. The phylogeny of a remarkable new genus and species of gymnusine staphylinid (Coleoptera) from the Auckland Islands. J. Entomol. (B), 44:153-173.
Herman, L. H. 1970. Phylogeny and reclassification of the genera of the rove-beetle subfamily Oxytelinae of the world (Coleoptera, Staphylinidae). Bull. Amer. Mus. nat. Hist., 142:343-454.
日高敏隆(監修). 1998. 日本動物大百科10昆虫III.平凡社,東京, 190pp.
Kasule, F. K. 1966. The subfamilies of the larvae of Staphylinidae (Coleoptera) with keys to the larvae of the British genera of Steninae and Proteininae. Trans. roy. entomol. Soc. Lond., 118:261-283.
Lawrance, J. F. and A. F. Newton, Jr. 1982. Evolution and classification of beetles. Ann. Rev. Ecol. Syst., 13:261-290.
Lawrance, J. F. and A. F. Newton, Jr. 1995. Families and subfamilies of Coleoptera (with selected genera, notes, references and data on family-group names). In J. Pakaluk and S. A. Slipinski (eds.), Biology, Phylogeny, and Classification of Coleoptera, pp.779-1006. Museum i Instytut Zoologii PAN, Warszawa.
Naomi, S. 1985. The phylogeny and higher classification of the Staphylinidae and their allied groups (Coleoptera, Staphylinoidea). Esakia, 23:1-27.
Newton, A. F, Jr. and D. S. Chandler. 1989. World catalog of the genera of Pselaphidae (Coleoptera). Fieldiana Zool., N. Ser., (53):1-93.
Newton, A. F., Jr. and M. K. Thayer. 1995. Protopselaphinae new subfamily for Protopselaphus new genus from Malaysia, with a phylogenetic analysis and review of the Omaliine Group of Staphylinidae including Pselaphidae (Coleoptera). In J. Pakaluk and S. A. Slipinski (eds.), Biology, Phylogeny, and Classification of Coleoptera, pp.219-320. Museum i Instytut Zoologii PAN, Warszawa.
野村周平.1997. アリヅカムシの飛翔.インセクタリゥム,34(2):22-30.
Pace, R. 1996. Fauna d’Italia Vol. 34. Coleoptera Staphylinidae Leptotyphlinae. Edizioni Calderini, Bologna.
Seevers, C. H. 1978. A generic and trival revision of the North American Aleocharinae (Coleoptera: Staphylinidae). Fieldiana Zool., 71:1-275.
Thayer, M. K. 1987. Biology and phylogenetic relationships of Neophonus bruchi, an anomalous south Andean staphylinid (Coleoptera). Syst. Ent., 12:389-404.
Zerche, L. 1998. Phylogenetisch-systematische Revision der westpalaarktischen Gattung Metopsia Wollaston, 1854. Beitr. Ent., 48(1):3-103.
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