ハネカクシ談話会ニュース No. 12
The Newsletter of the Staphylinidological Society of Japan, No. 12

2000年9月25日発行
The Newsletter of the Staphylinidological Society of Japan
ハネカクシ談話会ニュース No. 12
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事務局からの連絡
 (1).採集記録のニュースレター上への掲載についての意見を募集
 第5回例会において,ニュースレター上に採集記録を掲載していくという方針について議論しました.すでに,ニュースレター上でハネカクシの記録報告や分布資料が,数人の会員によって発表されていますが,この方向をもっと強く打ち出したらどうかというものです.このことと関連して,記録報告には標本や生息環境の写真の同時掲載が頻繁に生じるために,印刷を単純ゼロックスコピー印刷からオフセット印刷等に変える必要があるという意見も出ています.となると,会費をあと500円程度へ値上げし,年会費を1000円程度にすることも考えなければなりません.記録報告等の掲載についてのアイデア,あるいは印刷様式と会費値上げについてのご意見等を事務局までお寄せいただいたら幸いです.ニュースレター編集方法の変更に際して,参考にさせていただきたいと思います.

 (2).ハネカクシ談話会ホームページ (文責:野村 周平)
 昨年から準備を続けてきました『ハネカクシ談話会ホームページ』を立ち上げることができましたので,お知らせします.URLは次のとおりです:
    http://research.kahaku.go.jp/zoology/hane/hane.html
英語版もついた充実した内容です.掲載された項目は以下のとおりです.
1.  ハネカクシ談話会の紹介(ハネカクシ談話会写真集もあり)
2.  ハネカクシ談話会ニュース
3.  日本のハネカクシ研究者(会員の自己紹介のページ;現在10名を登載中)
4.  アジアのハネカクシデータバンク(東アジア産アリヅカムシ目録を登載中)
(3,4へ記事を追加したい会員の方は,野村周平までデータをお送り下さい)

 ハネカクシ談話会2000年度採集会のご案内
 採集会日時:2000年11月11日(土曜日)−12日(日曜日)
 宿泊:ふぐ地魚料理の宿 大塚(伊東市宇佐美1757-9;TEL:0557-48-8839)宿代8,000円(飲み物代を含まない)
 採集地:現在のところ天城山を予定していますが,よい場所が見つかれば海岸沿いの照葉樹林あるいは潮間帯での採集も考えているところです.
 参加申し込み先:岸本 年郎・新井 志保
 〒243-0034 神奈川県厚木市船子1737 東京農業大学昆虫分類研究室
 Fax.: 046-270-6226(宛名を昆虫分類研と明記して下さい)


 ハネカクシ談話会第5回例会の報告

 第5回例会が,6月25日千葉県立中央博物館会議室で開催されました.参加者は以下の12名です.新井志保,小田 博,岸本年郎,澤田義弘,島田 孝,寺澤英三,豊田浩二,直海俊一郎,西川正明,野村周平,吉田 進,渡辺 崇.

 例会会場にて撮影(2000年6月25日)

 講演要旨
(1).豊田浩二(埼玉県比企郡):Aspidobactrus toyodai MARUYAMA の生息環境について 1.Aspidobactrus属について
 Aspidobactrus属はSHARPが1888年に著した“The Staphylinidae of Japan”のなかでA. claviger マルムネアリノスハネカクシを模式種として設立されたハネカクシ科ヒゲブトハネカクシ亜科に含まれるグループである.ごく最近までA. claviger が知られるのみであったが,MARUYAMA(2000)により新たにA. semiorbiculatus,A. toyodai,A. formicae の3新種が記載され,現在では日本からのみ4種が知られている.また,この仲間はいずれも好蟻性を示しLasius ケアリ属やFormicaヤマアリ属のアリ類の巣から発見,採集されている.しかしながら,どの種も採集が困難なものばかりであり,標本数も種によっては極わずかであるのが現状である.今回は,さらなる標本の確保と未記載種の発見に資するため,A. toyodai の例を取り上げてAspidobactrus属ハネカクシが好むと思われる生息環境とそこでの採集方法を紹介する.
2.A. toyodai の生息地とその環境について
 A. toyodaiは本州及び九州の標本を基に記載された新種で,Holotypeは埼玉県東松山市上押垂(かみおしだり)の都幾川河川敷より得られた雄個体である.ここではこの東松山市の産地を例にとって生息環境を述べてゆく.
 東松山市は埼玉県のほぼ中央に位置し,丘陵地から平地へつながるわりと平坦な土地である.外秩父山地に端を発する都幾川は東松山市辺りの下流部まで来ると流路はクネクネと蛇行し,洪水時には水浸しになる広い河原が見られる.現在では洪水対策から流路の大幅変更がなされたが,旧流路はそのまま三日月沼として残され周囲の環境もある程度そのまま維持されている.周辺の植生はほとんど木は生えておらず,田んぼと畑の周辺にネザサのヤブと葦原が広がる程度である.また,オオブタクサやセイタカアワダチソウ等大型の帰化植物も立派な群落を形成している.地面には直径5〜50cm程度の石が転がっている.春季になるとこうした石の下にLasius sakagamiiカワラケアリやL. japonicus トビイロケアリ等がコロニーを形成するが,このうちカワラケアリのコロニーにA. toyodaiが見られる. 3.発生時期と採集方法について
 A.toyodaiが採集されている時期は3月下旬から7月中旬,最も採集しやすいのは4月から5月にかけてである.これはカワラケアリのコロニー形成時期と大きく関係してくる.3月下旬頃はちょうど暖かくなりはじめて石の下にアリが初期のコロニーを形成し始める時期であり,4月に入るとしっかりした状態の巣になる.たくさんの働きアリが石の下に群れるようになるが,この中にまぎれてA. toyodaiが徘徊する姿が観察される.初期の段階でも石下にわずかに群れるアリと共に見出される事もあるがこうしたことはまれであり,やはりある程度発達したコロニーの方が個体数も多く見られるので採集には適していると言えよう.6月に入るとカワラケアリのコロニー内にはたくさんの蛹(まゆ)が見出されるようになるが,この時期にはA. toyodaiは全く見られなくなる.また,6月に入ると草地の丈もずいぶんと伸び,観察には不向きとなってくる.7月にも若干得られているが,採集効率を考えるとやはり5月までの草丈が低い時期が良い.
 採集する時のコツは,石を起こす時にそっとひっくり返し,アリを興奮させないことである.もし興奮したならば,蟻酸臭が漂い,アリに噛み付かれてしまうので落ち着いて巣を眺めるようなことは出来なくなってしまう.アリの巣を無事のぞくことが出来たなら,最初からA. toyodaiが見られる場合も多いので,素早い動きに合わせ確実に吸虫管で吸ってしまうようにする.いない場合でも,しばらく巣を眺めていると奥の部屋から現れてくる.行動様式はやはり好蟻性のヒゲブトハネカクシとして知られるHomoeusa属のそれと似ており,時々物陰に隠れながらアリの間を歩きまわる.時には強く曲げた腹部をアリが触角で触れる姿も見られ,何らかのなだめ物質を分泌しているものと思われる.
 ひとつのコロニーで採集が終了したら,石をそっと元あった位置にのせて蓋をする.このとき注意したいのが,少しの隙間が巣内の乾燥化につながる恐れがあるので確実に向きを合わせるということである.乾燥すると場合によっては巣ごと引っ越されてしまい,定期的に採集できなくなる.一度の採集で得られる個体数は運にもよるが,ほんの数匹であるので,標本数を増やしたければ定期的に採集しなければならない.また,元どおり復元しておけば採集による環境かく乱が最小限でくいとめられるので,産地の保全にもつながる.同じ都幾川でも近年河川改修を受けた場所のカワラケアリのコロニーにはA. toyodaiは見られない.この現象は,A. toyodaiが自然度の高い場所にしか生息出来ないということを示唆するものと考える.
 なお,A. toyodaiの生息環境及び生態についてはMARUYAMA(2000)に詳しく述べられており,ここではその内容を参考にさせていただいた.
4.A. toyodaiと同様の環境に見られる甲虫類
 ここでは新たな産地を見出す場合に指標となりうる,同様の環境に生息する甲虫類を上押垂をひとつの例に紹介する.
ハネカクシ類: Acanthoglossa hirtellaが石下より採集される.九州より知られる稀種で本州では正式な記録は無い.他にも Astenus setiferが新井(1999)により報告されている.ゴミムシ類:好蟻性の種である可能性が高いアリスアトキリゴミムシLachnoderma asperumや荒地に生息するめずらしい種でチョウセンゴモクムシHarpalus crates ,クビナガヨツボシゴミムシTinoderus singularis が採集されるほか,ヒメマイマイカブリDamaster blaptoides oxuroidesが多いのも特徴である.テントウムシ類では,珍しいキイロヒメテントウ Scymnus syoitii が記録されている(豊田,2000).また,カグヤヒメテントウ S. kaguyahime も見られるがやはり珍しいものである.
 これらの甲虫類を見るとA. toyodaiの生息地の一つとしてはこれまであまり注目されていなかった平野部の河川敷で,ある程度自然環境が保たれている場所が挙げられよう.
5.他のアリではA. toyodaiは見つからないのか
 MARUYAMA(2000)ではA. toyodaiのhost antsとしてカワラケアリとトビイロケアリ,ハヤシケアリの3種を記録している.筆者はカワラケアリのコロニー以外で採集したことはない.長野県ではトビイロケアリのコロニーから,大分県ではハヤシケアリのコロニーからそれぞれ採種されているが,これは地域ごとに傾向があるのかそれとも時と場合によるのかはっきりしない.
 引用文献
新井志保.1999.Astenus setiferを東松山市で採集.寄せ蛾記,(91):2671.
豊田浩二.2000.埼玉県から新たに記録される甲虫類(1).寄せ蛾記,(96):2902-2910.
Munetoshi MARUYAMA,2000. A Revision of the Myrmecophilous Genus Aspidobactrus (Coleoptera: Staphylinidae: Aleocharinae). Sociobiology, 35(1): 149-173.

(2).野村周平(国立科学博物館):ロンドンとパリに所蔵される日本産アリヅカムシのタイプ標本  演者は2000年2月20〜28日,ロンドンの大英自博(Natural Hostory Museum: BMNH)とパリのパリ自博(Museum Nationale d'Histoire Naturelle, Paris: MNHN)を訪れ,日本産アリヅカムシ合計111種のタイプ標本を検してきたので,その所見を発表した.これらのタイプ標本はSharp(1874, 1883),およびJeannel(1958, 1959)で記載されたもので,著者によるholotypeの指定は全くない.しかし,唯一の標本に基づく,いわゆるmonotypyの規定によりholotypeと認定されるものが49種,syntypesのうち“Type”と印された赤ラベルなどが付され,holotypeに相当すると判断されるものが54種,Lobl, Besuchet, Kurbatovらによってlectotypeに指定されたものが7種についてあった。これらname bearing typesの他に,Acetalius dubius Sharpについては,原記載ではただ1個体の標本が指定されているにもかかわらず,paralectotypeのラベルが付された1個体が大英自博のコレクション中に見出された.以上の検討により,いくつかの種はシノニムとなり,また,所属する属の変更や大幅な分類学的変更が必要になると考えられる.

(3).直海 俊一郎(千葉県立中央博物館):ハネカクシの採集リストを作成するとき,亜科の配列はどうすればよいか? Lawrence-Newton流の配列の紹介
 現時点で“明らかに”日本に分布しているハネカクシの所属する20の亜科は,4つの亜科群に大別され,系統関係に基づいて以下のように配列される.[なお,亜科の配列に関する詳しい情報は,ニュース14号と15号に2回に分けて掲載される予定である.]
Staphylinidae ハネカクシ科
I. Omaliinae-group ヨツメハネカクシ群
  1. Omaliinae ヨツメハネカクシ亜科;2. Proteininae ハバビロハネカクシ亜科; 3. Micropeplinae チビハネカクシ亜科; 4. Dasycerinae ニセマキムシ亜科; 5. Pselaphinae アリヅカムシ亜科;
II. Tachyporinae-group シリホソハネカクシ群
  6. Tachyporinae シリホソハネカクシ亜科; 7. Trichophyinae ホソヒゲハネカクシ亜科; 8. Aleocharinae ヒゲブトハネカクシ亜科
III. Oxytelinae-groupセスジハネカクシ群
  9. Apateticinae オサシデムシモドキ亜科; 10. Scaphidiinae デオキノコムシ亜科; 11. Piestinae ヒラタハネカクシ亜科; 12. Osoriinae ツツハネカクシ亜科; 13. Oxytelinae セスジハネカクシ亜科
IV. Staphylininae-groupハネカクシ群
  14. Oxyporinae オオキバハネカクシ亜科; 15. Megalopsidiinae メダカオオキバハネカクシ亜科; 16. Steninae メダカハネカクシ亜科; 17. Euaesthetinae チビフトハネカクシ亜科; 18. Pseudopsinae スジヒラタハネカクシ亜科; 19. Paederinae アリガタハネカクシ亜科; 20. Staphylininae ハネカクシ亜科(Xantholininaeナガハネカクシ亜科を含む)


 書 評


 論 文 紹 介

Jan Klimaszewski, 2000: Diversity of the rove beetles in Canada and Alaska (Coleoptera Staphylinidae). Memoire de la Societe royale belge d’Entomologie 39:3-126.
 素晴らしい出来のQuediusの全形図の載った,美しいウグイス色の表紙をもつこの冊子は,カナダとアラスカのハネカクシの総説を目的としたものであり,一般形態の説明,亜科や各亜科の族(および亜族)への検索表,各亜科の説明があるばかりでなく,様々な亜科に属するハネカクシの全形図(70)が載っている.この本によると,カナダとアラスカのハネカクシは,23亜科,(約)274属1374種(アリヅカムシやデオキノコムシを含む)から成る.このうち,55属に属する119種が旧北区からの移入種であるという.ちなみに,移入種は,Staphylininae(約45種),Aleocharinae(約24種),Tachyporinae(約11種),Oxytelinae(約10種),Omaliinae(約8種)などとなっている.
 カナダ・アラスカに分布するハネカクシは,次の23亜科から成り立っている: 1. Omaliinae, 2. Proteininae, 3. Empelinae, 4. Micropeplinae, 5. Pselaphinae, 6. Phloeocharinae, 7. Olisthaerinae, 8. Tachyporinae, 9. Trichophyinae, 10. Habrocerinae, 11. Aleocharinae, 12. Trigonurinae, 13. Scaphidiinae, 14. Piestinae, 15. Osoriinae, 16. Oxytelinae, 17. Oxyporinae, 18. Steninae, 19. Euaesthetinae, 20. Leptotyphlinae, 21. Pseudopsinae, 22. Paederinae, 23. Staphylininae.こららの亜科のうち3,7,10,12,20の亜科が日本に分布しない.Empelinaeは奇妙なハネカクシで,非常に小さく(体長1.6-1.7mm),一見デオキノコムシに似ている.しかし,第8腹板に防御腺をもつという理由で,ヨツメハネカクシ亜科群に分類されている.各々の亜科について,標徴,分類,生活史,分布と多様性,参考文献が載っている.参考文献が全体では,15ページにわたってあげてあり,これからカナダ・アラスカ地域のハネカクシを研究しようとする者にとっては大変助かるものとなるであろう.分類,形態,分布,ファウナなどの情報がきちんとまとまったこの冊子は,対象となった地域がカナダ・アラスカに限定されているにもかかわらず,ハネカクシ屋にとってやはり必携の1冊となるのではなかろうか.(直海)

 ハネカクシ関係ミニ情報
GeodromicusとPsephidonus(ヨツメハネカクシ亜科)のどちらが有効名?
 最近,Geodromicus Redtenbacher,1857(ときに,1858とも言われている)とPsephidonus Gistel, 1856のどちらが有効名であるかという問題が,欧米のハネカクシ研究者の間でちょっとした話題になっているので,手短に紹介しておきたい.もともと,Geodromicusが広く用いられていた属名であるが,Blackwelder(1952)が,記載年から判断して,GeodromicusをPsephidonusで置き換えた.その後,属名Psephidonusがしばしば用いられるようになった.ところが,最近Zerche(1987)が,Geodromicusが発表された『Fauna austriaca』の出版の年月は,1857(あるいは1858)ではなく1856年9月であるという見解を発表した.その根拠は,Redtenbacherが,Dr. Gustav Kraatzに謹呈した本(Geodromicusが記載されているページを含む)に,“Seinem hochverehrtem Freunde Herrn Dr. Gustav Kraaz 24. 9. 1856 der Verfassar(大変尊敬できる著者の友人,グズタフ・クラーツ博士へ,1956年9月24日)”と書いていたことにあるらしい.つまり,彼は,1856年9月に出来上がっていないと,このような文章を著者が書くことはできないと考えたわけである.他方Psephidonusが記載されたGistel(1856)論文の出版の年月は,1856年12月であるから,記載年月がより早いGeodromicusのほうが有効名であろうと,Zercheは主張したのである.現在アメリカや日本などでは,属名Psephidonusがより普通に用いられ,ヨーロッパでは属名Geodromicusが一般的に受け入れられているという状況を考えると,この問題の決着にはまだ時間を要するかもしれない.皆さんは如何お考えでしょうか.(直海)
 引用文献
Blackwelder, R. E. 1952. The generic names of the beetle family Staphylinidae, with An essay on genotypy. U.S. nat. Mus. Bull., 200:1-483.
Gistel, J. 1856. Die Mysterien der europaischen Insectenwelt..., 530pp. Kempten: Tobias Dannheimer.
Redtenbacher, L. 1857. Fauna austriaca. Die Kafer. Ed. 2. Pp.1-976. Wien: Carl Gerold’s Sohn.
Redtenbacher, L. 1858. Fauna austriaca. Die Kafer. Ed. 2. Pp.i-cxxvi, 977-1017. Wien:Carl Gerold’s Sohn.
Zerche, L. 1987. Zur Synonymie von Geodromicus Redtenbacher (Coleoptera,Staphylinidae, Omaliinae). Beitr. Ent., 37(1):137-138.


 採 集 記 録

 Tympanophorus属ハネカクシの追加記録
  新井志保(東京農業大学)
日本産Tympanophorus属(ハネカクシ科)の2種,T.sauteri sauteri カクツヤケシアバタハネカクシとT.hayashidai ツヤケシアバタハネカクシに関するこれまでの記録は新井(1999)にて一度まとめられたが,筆者はその後記録のなかった産地にて本属の種を採集し,かつ未発表の標本を検する機会を得たので報告する.
1.T.sauteri sauteri:1頭,奈良県天川村大峰山系弥山,8.Z.1989,山田荘一採集,渡辺泰明保管.;1頭,東京都伊豆諸島三宅島坪田,15.X.1999,豊田浩二採集,保管.日当たりの良い林道脇で,蟻客昆虫を採集するために朽木をひっくり返したところ,本種がいた.;1頭,奈良県上北山村大峰山系和佐又山,11.Z.1999,丸山宗利採集,直海俊一郎保管.山道脇の,やや窪んだ部分に堆積した落ち葉を篩って採集した.
2.T.hayashidai:1頭,埼玉県東松山市岩殿,29.W.2000,新井志保採集,保管.日当たりの良いススキ原にて,ススキの大株のリタ−を篩ったところ,その中からでてきた.
新井(1999)は,T.hayashidaiはT.sauteri sauteriに比べて主として山地帯に生息していると報告した.今回筆者がT.hayashidaiを採集した東松山市岩殿は標高100メートルにも満たない場所である.しかしながら,豊田(1998)によれば岩殿は丘陵地帯になっており,平地に隣接しながらも山地性の動・植物相が見られ,異色の様相を呈しているということから,今回の本種の記録も岩殿丘陵の生物相を特徴付けるものといえる.
末筆ながら,T.sauteri sauteriの貴重な標本データ・採集状況の発表を快諾頂いた東京農業大学昆虫分類研究室の渡辺泰明先生,埼玉県嵐山町の豊田浩二氏,北海道大学大学院農学研究科昆虫体系学教室の丸山宗利氏に厚く御礼申し上げる.
引用文献
新井志保,1999.日本産Tympanophorus属(ハネカクシ科)について.甲虫ニュース.(126):11-12.
豊田浩二,1998.埼玉県嵐山町における甲虫相の研究.寄せ蛾記.埼玉昆虫談話会.(89):2583-2646.
(〒243-0034 神奈川県厚木市船子1737 東京農業大学昆虫分類研究室)

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 ハネカクシ談話会ニュースNo.12 (2000年9月25日発行)
 発行責任者:直海 俊一郎
 事務局:〒260-8682 千葉市中央区青葉町955-2 千葉県立中央博物館
     直海 俊一郎(TEL:043-265-3111; FAX:043-266-2481)
 ハネカクシ談話会幹事(千葉中央博:直海俊一郎); (科博:野村周平);
     (東京農大:岸本年郎)

 年会費 500円 (2000年度から)郵便振替にてお支払いください.
 加入者名:ハネカクシ談話会;口座番号:00170-2-145635
 関西支部事務局:〒666-0116 兵庫県川西市水明台3-1-73
     林 靖彦(TEL:0727-93-3712)
 関西支部幹事(川西市:林靖彦); (八幡市:伊藤建夫)


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