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コクシヒゲハネカクシ(山梨県小菅村産)



1)クシヒゲハネカクシとは?

 クシヒゲハネカクシ属 Velleius は大型のハネカクシで、日本列島から6種が知られています。簡単に言えば、大型の種が3種、小型の種が3種です。クシヒゲハネカクシは決して珍しいハネカクシではありません。むしろありふれた、日本国内ではどこにいてもおかしくないグループです。しかし、ハネカクシ一般についての関心の低さからか、わたしたちハネカクシ談話会の宣伝不足によるものか、日本全国各都道府県において十分に調査され、記録が報告されるにはいたっていません。いやむしろ、各種の見分け方が普及しておらず、同定誤りのような混乱を招いている有様です。

 クシヒゲハネカクシは、このように分布の面でよくわかっていないばかりではなく、生態の面でも十分に解明されているとはいえません。しかし、一部の種が、スズメバチ類の巣に発生するなどの興味深い習性をもつことが知られています。

 クシヒゲハネカクシは他の甲虫とともに樹液に集まってくることが知られていますが、そればかりではなく、バナナをえさにしたノムラホイホイで簡単につかまえることができます。ノムラホイホイを使って、クシヒゲハネカクシがどの地域にどのくらいいるのか、いつごろ発生するのかについて調べてみましょう。




ノムラホイホイで捕獲されたコクシヒゲハネカクシ(赤矢印)


2)クシヒゲハネカクシ各種の同定

 クシヒゲハネカクシの日本産6種の分類については、Watanabe (1990)(註1)によってほぼ確立しています。ここでは、この論文にしたがって、ウェブ検索表を使って種の同定ができるようにしました。

 クシヒゲハネカクシ属ウェブ検索表へ(ここをクリック)



クシヒゲハネカクシ属の6種.左から、ナミクシ、コクシ、クシヒゲ(タダクシ)、ヤマトクシ、ナガクシ、アマミクシ.


3)クシヒゲハネカクシ研究の問題点

 このようにクシヒゲハネカクシ類は、分類同定もそれほど難しくなく、日本各地でわりと普通に採れるハネカクシです。それでは一帯この属の何が問題なのでしょうか?

 問題の一つはその分布にあります。クシヒゲハネカクシ(V. pectinatus;以後「タダクシ」)は、西日本では比較的普通のハネカクシですが、温暖地を好み、関東以東の東日本にはあまりいません。一方ナミクシヒゲハネカクシ(V. dilatatus;以後「ナミクシ」)やコクシヒゲハネカクシ(V. setosus;以後「コクシ」)は東日本に多く、西日本では高い山にしかいないようです。ところが、これまでの甲虫図鑑にはタダクシだけが掲載されることが多かったため、ナミクシやコクシがタダクシに誤同定されて報告されてしまうケースが相次ぎました。その結果、各種の分布域がわからなくなってしまう事態を引き起こしたのです。

 ですから、今後のクシヒゲ研究の最初の課題は、正しい同定に基づいて、各種の分布を明らかにすることです。それと同時に、西日本でタダクシを採った人の報告によると、この種は5月中旬くらいから発生するようです。関東のナミクシ、コクシはそんなに早く成虫が出現することはありません。したがって、各種の出現時期も課題であるといえます。

 また、小型の3種はいずれも分布が局限され、個体数も、大型の種に比べて非常に少ないもののようです。これらがどのような場所に生息しているのか、どのような生態を持っているのかは非常に興味深いテーマです。




コクシヒゲハネカクシ(山梨県産)

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