北太平洋に生息している鯨類・鳥類・魚類の食性研究者のために

制作・監修: 窪寺恒己 (国立科学博物館・動物研究部)
協力・支援: 大泉 宏 (東海大学・海洋学部) 今泉智人(海洋大学)

後援: 胃内容物解析プロジェクト (水産庁遠洋水産研究所)


 頭足類は世界の海洋において海棲哺乳類,海鳥類,魚類など多くの高次捕食者の主要な餌生物であることが知られているが,体を鱗やキチン質の殻で覆われていないため,捕食者の胃内部で魚類や甲殻類などより速やかに消化の影響を受ける..
 消化はまず表皮,頭部と外套膜の間,鰭付着部と進み,外套膜と鰭と頭足部が離れる.ついで,内臓や吸盤などが消失し外套膜と腕肉質部だけとなる.この状態になると通常の分類形質では,種査定が困難になる.さらに消化が進み,頭足部では口球が腕から離れ,口球肉も消化され,最終的にはキチン質で消化の影響をほとんど受けない上下の顎板が残される.
 食性研究者はこの残された顎板を手がかりに,どのような頭足類を餌としているか追求していくことになる.顎板による頭足類の分類,査定に関する情報は,M. R. Clarke(1986)編の"A Handbook for the Identification of Cephalopod Beaks"に集約されており,また北太平洋亜寒帯海域の外洋性イカ類に関しては,窪寺・古橋(1987)が「胃内容物中のイカ類及びハダカイワシ科魚類の種査定に関するマニュアル」として報告しているが,どちらも最近では入手が困難である.
 本マニュアルは,その後も集めつづけているビーク・リファレンスコレクションと新たに撮影したデジタル画像を基に,日本近海から北太平洋に生息している頭足類のうち約100種につき,顎板による種査定の手引書として,新しい情報伝達手段であるインターネットホームページおよびCD-ROMとして提供するものである.大きく「下顎による検索ページ」と「種基礎表ページ」からなる。検索ページでは、本バージョンでは、50種を取り上げて、種あるいは近似の属まで追跡することが出来るように検索キーを作成してある。検索キーに載っていない種に関しては、検索キーで分類された種を基に、その近縁種の種別基礎表を調べて、詳細な形質を比較・検討が必要である.さらに、胃中に残された顎板から餌となっている頭足類の体長と体重を推定するために、今までに調べられた20種について下顎吻長と外套長、体重の相関式をまとめて掲載した「体長・体重の推定」。また,胃内容解析や顎板の取り扱いに初心者の方に,サイドメニューとして注意・参考事項をまとめてある.
 本マニュアルは北太平洋産頭足類をすべて網羅しているわけではなく,捕食者によっては,胃内容物から検索表に合わない顎板が出現することも多々あると思われる.それらについては情報が集まり次第,更新していく予定である.(2004/12/28)


 戻る


ご質問、またはコメントやご助言は、kubodera@kahaku.go.jpまでメールをいただければ幸いです。
このページは、2004/12/28に更新されました
All Right Reserved Kubodera, 2001