スギ
Cryptomeria japonica D.Don
スギ科 裸子 常緑高木
分布 北海道・沖縄・小笠原をのぞく各地
高さ 60m
花の時期 2〜4月

日本一大きく、また長く生きる樹木。太い幹が真っすぐにのびて、幹の直径は5mにもなる。漢字で杉と書くスギの名は、幹が真っすぐにのびる意の「すぐ木」からついた。葉は針のような形、長さ4〜12mmで細い枝にたくさんつき、常緑で冬も枯れない。花は1本の木に雄花と雌花がつく。雄花は小さく、長さ6〜9mm、卵の形で、枝の先に集まって咲き、たくさんの花粉を飛ばす。花粉は花粉アレルギーの原因となる。雌花は球形で、直径1cmくらい、熟すと直径2〜3cmになる。約2,000年も生きる。

北海道の南部から南では、ふつうに見られる。町はずれや、森のある村里で、まわりをぐるりと見渡すと、必ず黒っぽい先のとがった木が、何本か並んで見えるか、たくさん集まって林になって見える。これがスギで、日本の風景にスギの見えないところはないといわれる。とくに、神社や寺のまわりには、大きなスギが見られる。町や村に近い山では、スギの林が広がっている。もっと山奥では、もっと広いスギ林を見ることができる。これらのスギ林は、材木を利用するために、人が苗を植えた人工林だ。

自然のままのスギの自然林は、北海道をのぞいて分布するが、とても少ない。鹿児島県の屋久島には、大きな自然林がある。そのなかに生える樹齢1,000年以上のものを屋久杉と呼ぶ。なかでも縄文杉と名のついたスギは、根まわりが43mもある。高知県、静岡県、秋田県にも有名な自然林がある。

雄花を竹筒に入れて打ち出すスギ鉄砲は、子供の遊び道具。

スギは、幹からすぐれた材木がとれるので、各地で植えられる。スギの材木は、縦に割れやすいので、板をつくるのによい。静岡市にある弥生時代の登呂遺跡の田んぼのあとからスギの板が出てきたが、大昔でもスギの材木を割って利用することができたのである。また、成長が早く、材木があまり固くないので削ったり切ったりがかんたんで、曲げてもすぐには折れない、などの性質があり、家を建てたり家具をつくるのにつごうがよい。そのため、日本人の生活にとても役立つ樹木である。

また、香りがよいので、酒を入れる樽として、盛んに利用された。とくに、奈良県の吉野川の付近は、江戸時代から明治時代にかけて、日本一のスギの材木の産地として知られた。吉野川のスギを育てる林業の技術は、やがて全国に広まった。

スギは大木になり姿が立派なので、神社や寺に植えられ、人々の信仰を集めてきた。高知県大豊町の杉神社の大杉は高さ60mの日本一のスギである。また、街道の並木や目印の木として植えられた。神奈川県箱根町の杉並木は名高い。

1950年ころから、日本は急に豊かになって、あちこちで家がつくられて材木が不足した。そこで、材木をとるために、各地でスギが植えられた。ところが外国から安い材木が輸入され、国内の材木は利用されなくなった。今では成長の途中の杉林が手入れもされずにいるため、せっかく植えたスギが利用されないだけでなく、大雨のときに、根のはらなくなった地盤がゆるんで洪水がおきやすくなるといった問題が発生している。

学名のCryptoは、「かくれた」の意味、meriaは「部分」の意味で、名前をつけたリンネが何を意味したのかは分からない。japonicaは「日本の」という意味。中国大陸によく似たなかまがあり、日本のスギの変種とされたり、別種とされる。長江の下流の山には、立派な原生林がある。中国大陸では、葉がスギより大きいコウヨウザンを杉木と呼び、日本のスギのように林業として植える。アメリカのセコイヤメスギやセコイヤオスギもなかまである。セコイヤメスギは世界でももっとも高くなる樹木といわれ、最高のものは、112mもある。日本で化石として記録され、生きている姿で中国大陸で発見されたアケボノスギもある。アケボノスギは、メタセコイヤとも呼ばれ、日本の各地の公園などに植えられる。葉が秋に美しく黄色になって、落葉する。