ガマ
Typha latifolia L.
ガマ科 単子葉 多年草
分布 北海道〜沖縄
高さ 1.5〜2m
花の時期 6〜8月

茶褐色の円柱形の穂がガマのシンボル。これがいわゆる「ガマの穂」で、茶色に見えるのは無数にある雌花の柱頭がすき間もなく並んでいるから。秋にはくずれて穂綿をつけた実を飛ばす。穂綿は雌花の柄についた毛の束の集合だ。

葉は下半部はさやになって順に内側のさやを包む。夏には葉のさやの真んなかを貫通して花茎がのび、先に黄色い雄花序、そのすぐ下に緑色の細目の雌花序をつける。ガマの穂ははじめは細くて緑色である。

集落や里山のあちこちにある湖沼や池、河川のふち、山間の湿地にたいてい群生しているので見つけやすい。初夏には林立する幅1〜2mの革のような長い葉、盛夏には上下に並んだ雄花序と雌花序、秋には茶色のガマの穂が決め手になる。

ワニザメに皮をはがれたウサギが蒲の黄にくるまって傷をいやすという有名な「因幡の白兎」の神話がある。蒲の黄とは、ガマの花粉のことで、漢方では蒲黄と呼ばれ、奈良時代前から傷薬や血止め薬として使われて来た。花粉を集めて日干しにした粉末を、外傷にはそのままかけて使い、内出血には他の薬と配合して服用する。葉は長くて丈夫なので、かつてはすだれや筵、ござなどに利用した。ガマの葉や花茎は生け花の材料としても重要で、しなやかな葉と穂のおもしろさが好まれ、幅広く用いられる。花茎はドライフラワーになる。俳句の世界では「蒲」や「蒲の穂」は夏の季語、「蒲の穂絮(穂綿)」は秋の季語になっている。葉の幅1cm以下の小ぶりのコガマ、同ように、葉の幅はせまいが雄花序と雌花序の間にすき間があるヒメガマがある。コガマは少ない。10年ほど前、ガマとコガマの雑種アイノコガマが発見された。