フシグロセンノウ
Lycnis miqueliana Rohrb. ex Franch. et Sav.
ナデシコ科 離弁花 多年草
分布 本州・四国・九州
高さ 50〜80cm
花の時期 7〜10月

朱赤色でひときわ目立つ5枚の花びらが何よりの特徴。節がふくらんで暗紫色を帯びる点ではフシグロ、花は園芸植物のセンノウに似ることから、この名がついた。花は直径5cmほど、花びらは細長い脚の部分と直角に曲がって扇状に広がる弁状の部分から成り、ふちにはまったく切れこみがない。5個のがく片はナデシコのように互いにくっついて、長い筒になる。花柱は5本あって果実が5つに割れる。ナデシコ同様に葉は対生し、鋸歯はない。

夏から秋にかけて、里山や高原の雑木林やカラマツ林、あるいは林のふちに三三五五とかたまって花が咲く。木立の陰に咲く大きな朱赤色の花を見つければ、まちがいなくフシグロセンノウである。花の時期が長いので出会う機会は多い。

別名をオウサカソウという。この名がいつついたのかは分からないが、京都から大津へぬける逢坂峠で、多くの旅人がこの花を眺めながら一息ついたありさまが想像できる。今ではめったに使われない。

日本の固有種で、花が大きくよく目立つのだが、改良は進まず、園芸植物はつくられていない。せいぜい庭植えや鉢植えとして楽しむか、切り花にして生け花の材料に使う程度である。ところによっては、八月の月遅れのお盆のころに咲くので、キキョウやオミナエシ・ミソハギなどとともに盆花と呼んで墓に供える。

俳句の世界では「仙翁花」と書き、秋の季語として用いるが、正確にはセンノウは別の植物である。「人去りし山荘に咲く仙翁花」(宮田和子)

野生のなかまにエンビセンノウやセンジュガンピがある。前者は花は深紅色で花びらの先は細かく裂け、後者は花は白色で小さく、花びらの切れこみは浅い。