ヘビイチゴ
Duchesnea chrysantha (Zoll. et Morren) Miq.
バラ科 離弁花 多年草
分布 日本全国
高さ 5〜10cm
花の時期 4〜6月

春に、地面をはう長いつるから3枚に分かれる葉と花をつける茎をのばし、5枚の花びらのある黄色の花を咲かせる。雄しべと雌しべはたくさんあり、花床という伏せた茶わんのようなものについている。花が終わると、雄しべは落ちてしまい、花床がムクムクとふくれてくる。そして、赤く色がついた花床の表面に、雌しべの根もとの子房からできた種子がたくさんついた果実ができる。種子も赤いので、果実全体が毒々しい赤に見える。

多くの植物では、果実は子房がふくらんでできるが、ヘビイチゴでは、花床という、別な部分がふくらんで果実をつくるのが重要な特徴だ。

日当たりのよい田んぼのあぜ道や、空き地の草むらに生える。初夏の赤い果実はヘビイチゴとよく似たヤブヘビイチゴだけなので、見つけるのはやさしい。ヤブヘビイチゴは日陰のやぶに生えていて、果実が少し大きい。

名前は中国名の蛇苺から。直径1cmに満たないが、毒々しい赤い果実は、人間の食べものではなくて、ヘビの食べものだと考えられたという。果実には毒があって食べられないというが、それは誤りで、ただスカスカして、まずいだけである。ヘビイチゴは利用されない。

じつは、中国の蛇苺はヤブヘビイチゴをさしていう。中国では、ヤブヘビイチゴは薬用で、ヘビや虫にかまれたとき、のどの痛みやはれ、熱病などの薬とされる。花や果実を含めた茎や葉全体を煎じて飲む。同じところに生えるヒメヘビイチゴは果実がふくれない。オヘビイチゴは葉が5枚に分かれる。山に生えるシロバナノヘビイチゴは、花が白く、果実は食べるとたいへんにおいしい。