ヒルガオ
Calystegia japonica Choisy
ヒルガオ科 合弁花 多年草
分布 北海道〜九州
高さ 1〜2m
花の時期 7〜8月

日中にアサガオの花そっくりの花を咲かせるのが何よりの特徴。茎はつるになり、上から見て左巻きによじのぼる−これもアサガオと同じ。葉はだ円形で基部が矛のように左右に少しはり出し互生する。つるの先のほうではのびるにつれて、連続的ないし4、5個おきに葉のわきから花の芽がのび、下から上へと花が咲き進む。花は夜明けとともに開き、午後には精気を失って、花によるちがいもあるが3時ごろにはしぼんでしまう。短めの1日花というべきだろう。

まれなことだが、花冠が3分の1ほどまで5つに裂けたキキョウのように咲くヒルガオも見つかる。新たに「フカギレヒルガオ」と名前をつけるのはどうであろうか。これは先祖返りというべき現象で、このことからヒルガオの花は5枚の花びらがくっついてできたことが分かる。

がくのすぐ下に大きな2枚の苞という葉があり、がくを隠す。雄しべは5本、花冠の上につき、やくは外向きで縦に裂ける。雌しべが雄しべより高くのびる長花柱花と、雄しべと同じ高さになる等花柱花があり、花柱の先にはこぶだらけの2つに裂けた柱頭があるというのも重要な特徴だ。

日当たりのよい荒地や土手、畑地や垣根に盛んにつるをのばして茂る。真夏の午前中に人家近くや畑を歩けば生け垣や草地でたいてい見つかる。アサガオのつるには下向きの毛があり、葉は幅広い矛形で毛深いこと、苞が小さくてがくから離れていること、柱頭の先が2つに裂けないことなどたくさんのちがいがあるので、アサガオとまちがえることはない。花のない株では葉の形やつるや葉の毛のあるなしに着目すればよい。

ヒルガオは梅雨のころから咲きはじめるので「雨降花」と呼ぶところも多い。『万葉集』では「かほばな(顔花)」の名で登場し、文芸の世界では夏の季語として盛んによまれる。

寺田寅彦(物理学者・随筆家)の

 「昼顔やレールさびたる旧線路」や、

太田水穂(歌人・国文学者)の

  
「この暑き日焼けの畑の土の上に 
   這えひろがるは昼顔の花」

はその生態をよく表し
ている。しかし、夏に盛んに茂っていたヒルガオは、秋になれば急におとろえ、咲く花は少なくなり、花には直径5〜6cmの小さいものが混ざりはじめ、やがて枯れていく。今度はさしずめ「コリンヒルガオ」だ。

代表的な人里植物のひとつ。地下茎は白色で直径3〜4cm、再生力が強く、畑では鍬で寸断されても断片から新芽を出してふえる始末の悪い害草となっている。そのせいかヒルガオはアサガオとちがって園芸植物とはならなかった。ただ、八重咲き品だけは19世紀半ばに日本からイギリスに運ばれ、カリフォルニア・ローズの名がつけられて欧米諸国で栽培されるようになった。地上部を刈りとって乾燥させ、民間薬として下剤・利尿剤に用いることもある。ヒロハヒルガオは葉の幅が広く、三角状の矛形、葉も苞も先がとがる点がことなる。コヒルガオは葉の両側にはり出した部分が大きく、花の柄の上部に縮れたせまいひれが出る。ハマヒルガオは葉はぶ厚くてつやがあり、海辺に生える。ときどき、海辺から離れた砂地に運ばれて、ふえていることがある。このようなケースは国内帰化植物と呼ばれる。