フタバアオイ
Asarum caulescens Maxim.
ウマノスズクサ科 離弁花 多年草
分布 本州・四国・九州
高さ 10〜20cm
花の時期 3〜5月
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地表にそって落ち葉をかぶりながら地下茎が横たわる。春になるとその先の大きな冬芽から2枚ときには1枚の葉が開き、同時に1個の目立たない花が咲く。名前の通りに2枚の葉が目立つのが何よりの特徴。ただし、芽生えのときの本葉は1枚である。花には花びらがなく、3個の紫褐色のがく片が互いに接してお椀の形になる。
ハート形の対生する葉を手がかりに里山や低山の落葉樹林を歩けばよい。葉は春に開くのでうすくて柔らかく、うぶ毛が多い。念のため葉を分けてお椀のような花が咲いているかどうかを確かめよう。
アオイの名がついているが、アオイ科の植物ではない。徳川家の三葉葵の紋所はフタバアオイの葉3枚をデザインしたものだが、ミツバアオイは実在しない。5月に行われる京都の上賀茂・下鴨神社の葵祭にも登場するのでカモアオイの別名もある。葵祭ではカツラの枝にフタバアオイの枝葉をつけたものを、祭人の頭、山車の屋根、すだれ、器などにくっつける。平安中期の『本朝月令』という本には「鴨祭の日、楓山の葵を頭に挿す。当日早朝、松尾の社司らに挿頭の料(材料)をもたらしむ」とあるので、当時は上社・下社のまわりにフタバアオイがたくさん生えていたのだろう。カツラの葉もフタバアオイに似ているところから、カツラを男性、フタバアオイを女性に見立てて一緒にし、家庭の繁栄を願ったとも伝えられる。
地下茎や根は土細辛と呼び、乾燥させ煎じて、咳止めや発汗の薬とする。ウスバサイシンも、ふつう葉は2枚ずつセットになってつく。しかしこちらはほとんど毛がなく、がく片の下半部が互いにくっついてがく筒をつくる点がことなる。
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