サクラソウ
Primula siebolddi E. Morren
サクラソウ科 合弁花 多年草
分布 北海道〜九州
高さ 15〜40cm
花の時期 4〜6月

ふつう太い地下茎をのばしてふえる。葉は長目の卵形ですべて地下茎の先から束になって出ること、花は葉のない茎の先に7〜20個ずつ放射状につくことが特徴。サクラとちがって、5枚の花びらは互いにくっついて下は細長い筒となり、1枚ずつ散ることはない。花のまん中には、瞳と呼ばれる環状のもようがあり、株ごとに色ばえがちがうので、瞳を見れば株の広がり方が分かる。雌しべは筒の入口までのびるものとのびないものがある。

里山の湿った明るい林や野原や川原の草地に群生する。サクラに似た鮮やかなピンクの花が目印。昔とちがってかんたんには見つからない。

春の季語。小林一茶は、「我国は草もさくらを咲きにけり」とよんだ。サクラソウの名はいうまでもなくサクラの花の形と色ばえからつけられたもの。その花をめでて江戸時代のなかごろから武蔵野の野生株をもとに盛んに栽培された。さまざまな色や花形の変わりものが選び出され、今では500〜700もの園芸品種があるといわれる。

一方、自生地のほうは里山の開発でなくなりつつある。山林の手入れが行きとどかず生育条件が悪化し、あるいは乱獲されたりして、全国的に少なくなって、今では絶滅が心配されるほどになってしまった。国の特別天然記念物の浦和市田島ヶ原の保護地ですら、開発による群落の寸断がたたって、花粉を運ぶ昆虫(トラマルハナバチ)が消え、受粉・受精ができず、群落はおとろえている。同じく湿地に生えるクリンソウはずっと大きく、高さ40〜80cm、花が何段にもつく。オオサクラソウもよく似ているが、葉は手の平のように切れこみ、高山に生える。