ススキ
Miscanthus sinensis Anderss.
イネ科 単子葉 多年草
分布 日本全国
高さ 1〜2m
花の時期 8〜10月
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ススキの穂と呼ばれる真っ白な尾のような花穂が何よりの特徴。だから、古い名は尾花である。ちょうどトウモロコシ畑に穂が出るころ、河原や原野ではススキは、トウモロコシの雄の花穂に似た穂を、10〜30本も垂れ気味にのばしはじめる。色はまだ黄褐色である。この穂は学問的には総といい、長さ10〜30cm、5mmほどの間隔をおいて規則正しく節があり、節には長い柄と短い柄の2つの小穂が対になってつく。小穂は長さ5〜7mm、基部からその1〜2倍の長さの毛の束(基毛)が生える。小穂の基毛は花の時期には直立してくっつき合っているが、やがて水平に開き、熟した小穂とともにはずれて秋風に舞う。ススキの穂が白く見えるのは、小穂の基毛が開いたからである。小穂は散っても柄や総は茎に残ったままである。
葉は、下のほうの鞘の部分(葉鞘)と葉身の部分に分かれ、茎の下半分に集まって生じ、葉身は長さ20〜60cm、幅は0.5〜2cm、中央の脈は白色、ふちは細かいのこぎりのようにざらざらしていて手を切りやすい。
低地から亜高山まで、荒地や土手、河原や草地などに群生し、ときにはススキの原になる。ときどき、オギやカリヤスなどとまちがえることがあるので、そのちがいははっきり覚えておきたい。
秋の七草の尾花で知られ、十五夜の月見、茅ぶき屋根、牛馬の飼料など、ススキは私たちのくらしにたいへんなじみが深い。田園地帯でも山里でも、秋には白い穂をなびかせて独特の風景をつくり出す。文芸の世界では、夏は青芒、秋は芒・尾花・花芒、冬は枯芒が季語となる。枯芒といえば、大正末期に流行した野口雨情の「船頭小唄」を思い出す。
「俺は河原の枯薄、同じお前も枯薄」
木枯らしのふきはじめるころ、河原や野山ではホウキを逆さにしたようなススキの穂から穂綿が飛び散り、そのあとには立ち枯れた姿があわれを誘う。
このところ、茅ぶき屋根は全国的にめずらしくなってしまったが、岐阜県白川郷や富山県菅沼では、茅ぶき屋根の集落が世界文化遺産に指定され、その保存に力がつくされている。ここではススキを大茅、カリヤスを小茅と呼んで、地区によってススキでふくところとカリヤスでふくところがある。ススキは生産量は大きいが、茎が太いのでしまりにくく、カリヤスは茎が細くしまりやすいが量が多くない。集落のまわりの山々にはあちこちに茅場があり、秋に刈りとって束ねておき、何束かを連結させ、3月末から4月はじめにかけて固くしまった雪の上を滑らせていっせいにおろす茅おろしは迫力があった。茅束の上に人が乗って、方向や速度を調整しながら、おりてくるのだ。ヨーロッパ各地では、今まで屋根ぶき用にアシが使われていたが、河川環境保全の声の高まりにつれて材料の入手が困難になった。かわって脚光を浴びているのが日本のススキである。ヨーロッパでは、すでに広い面積にススキが栽培されている。 ススキの園芸品には葉に白い縦じまの入ったシマススキや黄白色の横じまの斑のあるタカノハススキなどがある。これらの園芸品をはじめ、ススキは生け花の材料としてもすぐれている。穂のある時期はもちろん、夏の穂が出る前の時期にも生けるし、穂のくずれはじめた初冬には「枯れもの」として利用する。漂白して真っ白になった穂を使う手法もある。オギはススキと同じような場所によく生えているが、どちらかといえば水辺や湿地に多い。地中に長い地下茎をのばしてふえ、束ではなく1本ずつ生える。小穂の基毛が銀白色で、小穂の長さの2〜4倍もあることや茎がのびるにつれて葉鞘が下から枯れ落ちることなどがススキとの大きなちがいである。ほかにカリヤス、カリヤスモドキ、オオヒゲナガカリヤスモドキがあるが、これらは茎は1株に2、3本しかなく、葉は茎に均等に並び、ふちはあまりざらつかないし、花序の総は2〜12本程度で少なく、小穂の基毛は小穂より短いことなどが区別点である。
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