ヤブラン
Liriope platyphylla E.T.Wang et T.Tang
ユリ科 単子葉 多年草
分布 本州〜沖縄
高さ 30〜50cm
花の時期 7月下旬〜9月

濃緑色のリボンのような葉の束のなかから、何本も花茎がのびて、円柱状の花序に小さな紫色の花が群がって咲く。花は6弁で直径8mmほど、やくをのぞいて雌しべも雄しべも紫ずくめで、関節のある短い柄をつけ、3、4個ずつ集まって小さな花序をつくる。小さな花序が花序の軸にいくつもつく。花は小さな花序のもっとも大きい花から咲くので、花序のあちこちで不規則に咲いているように見える。開花は午前10時ごろ、夕方の6時過ぎに閉じて翌日再び開くことはない。花が終わると雌しべは破れて縮んでしまい、胚珠がむき出しになって成熟し、秋に黒紫色の丸い種子になる。

里山の林や神社・寺の境内に大小の株をつくって生えている。朝の散歩では、いつまでたってもつぼみのような閉じた花しか見られないが、昼下がりには花序のあちこちに水平に開いた花を見ることができる。花も実もない時期には、幅18〜10mmの細長い葉が目印となる。

やぶに生えて、葉がランに似ているというのでこの名がついたが、ランではなくユリのなかまである。葉は常緑で、株は丈夫で育てやすいので、ふちが黄白色になったフイリヤブランや新葉のときに先だけ白くなるオキナヤブランなどの園芸品種とともに、花だんのふちどりなどによく使われる。もちろん、単独に株を植えて鑑賞するのもよい。

被子植物でありながら子房は成長せず、果実ができなくても種子ができるめずらしいケースで、ジャノヒゲとともに教材に欠かせない。ヤブランと同じ常緑で庭にもよく植えられるジャノヒゲがある。葉は細くて強くそり返り、花は花被の下部が子房にくっついて、種子はきれいなコバルト色になる。