サネカズラ
Kadsura japonica (Thunb.) Dunal
マツブサ科 離弁花 つる性常緑低木
分布 本州〜沖縄
高さ 5m
花の時期 8月
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葉は少し厚く、卵形で、長さ5〜15cmくらい。雄花と雌花が別の株に咲き、黄色で直径2.5cmくらい。果実は秋から冬に赤く熟す。
暖かい地方の人家に近い森のなかや道ばたのやぶ、石垣などにからみついている。森のなかでは、元気よくのびているつるは別だが、花や果実はなかなか見つからない。日当たりのよい石垣などでは、花と果実が見つかりやすい。
つるは、お互いにからみ合いながら地面をはったり、近くの立ち木に登りついたりする。そのようすが、人と人が会ったり、分かれたりすることを思わせる。昔の人は、サネカズラをそんな意味をこめた短歌のなかにとり入れた。小倉百人一首に
「名にし負はば逢坂山のさねかづら
人にしられでくるよしもがな」(三条右大臣)
と歌われた。
冬も青々とした葉をつけ、赤い果実が葉のなかに見えかくれして美しい。そのようすから「実カズラ」、つまりサネカズラの名前がついたという。また、「サナカズラ」という古い名前が変化したもので、ナは滑りのナという説もある。「滑りカズラ」の意味で、つるをすりつぶすと、ネバネバした汁が出るのでこの名前がついた。昔は、つるや葉からとれるネバネバした汁を、男の人が髪にぬって形をととのえた。それで、またの名をビナンカズラという。また、女の人がこの汁をシャンプーのように使って、髪を洗った。
果実を干したものを、南五味子といい、せき止めの薬とする。本州の中央から北海道に生え、朝鮮半島、中国に分布するチョウセンゴミシは、北五味子といい、薬用となる。マツブサは、黒い実がなる。枝を干すと、よい香りが出るので、浴場で使った。
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