ナンバンギセル
Aeginetia indica L.
ハマウツボ科 合弁花 一年草
分布 日本全国
高さ 15〜20cm
花の時期 7〜9月
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寄生植物で、葉緑素がない。花茎は1〜数本ずつかたまって地上にのび、先に長さ1.5〜3cmの筒形の花が1個咲く。ほんとうの茎はごく短くて地中にかくれ、葉は三角形のうろこのような葉がいくつかあるだけ。インドやマレーシアまで広く分布し、熱帯ではサトウキビやショウガ科の植物の根に寄生する。
日本ではよくススキ、ミヤコザサ、チガヤ、ウラハグサ、ミョウガに寄生しているので、8、9月の花の咲く頃、これらの植物があれば、注意して見よう。しかし、宿主の植物があれば必ず見つかるわけではないので、偶然を期待しよう。
古くは「思い草」といい、うなだれるようにして花を咲かせる姿をたとえたもの。『万葉集』にはすでに
「道の辺の尾花がしたの思い草
今さらになどか物は思はむ」
とよまれている。ススキ原の下に生えているナンバンギセルは何を思っているのだろう、という意味で、万葉のころ、ススキに寄生することが知られていたのかもしれない。ナンバンギセルは南蛮煙管と書き、花の形を西洋のキセルにたとえて、室町時代以降につけられた近代的な名で、今ではこちらのほうがよく使われる。しかし、俳句の世界では南蛮煙管やきせる草とともに今でも思い草が季語として生きている。
ススキを盆栽にして種子をまけば、翌年は居ながらにしてナンバンギセルを楽しむことができる。中国では、はれものの治療や解毒に使われる。めずらしい植物ではあるが、ときには畑作のイネに寄生して大被害をおこす。花の長さが3〜5cmにもなるオオナンバンギセルが、本州〜九州に分布している。どちらかというと山地に生えるので、ヤマナンバンギセルの名もある。
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