ヨメナ
Kalimeris yomena Kitam.
キク科 合弁花 多年草
分布 本州中部以西・四国・九州
高さ 60〜120cm
花の時期 7〜10月

代表的な野菊のひとつ。頭花は、直径2.5〜3.5cm、中輪のキクといったところである。もっとも大事な特徴は、果実の頭につく冠毛という毛の長さが0.5mmほどしかないこと。日本固有の植物で、雨の多い日本では、冠毛が、果実を風にのせて飛ばす役に立たないので退化したという考えもある。

山野のちょっと湿り気のある道ばたや林のふちにありふれた野草で、地下につるをのばして群生するので見つけやすい。よく似たノコンギクは、頭花をくずして冠毛の長さを確かめれば、4.5〜5mmもあるのですぐ見分けがつく。頭花がないと、区別はむずかしい。

 
 「春日野に煙立つ見ゆ少女らし
    春野のうはぎ採みて煮らしも」 

奈良の春日野で
民家に煙が立っているのは、乙女たちがヨメナをつんで煮ているからだろう、という意味で、春の田園風景を歌ったもの。『万葉集』にはすでにヨメナつみの歌が2首よまれている。昔はヨメナはウハギ(兎芽子)と呼ばれていたが、いつのころからか嫁菜になった。柔らかい若芽は、シュンギクの香りがあって昔から山菜としてつまれていた。味がよく花も美しいところから嫁菜の名が生まれたという。天ぷらやあえ物、嫁菜飯にして食べる。俳句や和歌では、嫁菜飯や「嫁菜摘む」が春の季語、「嫁菜の花」は秋の季語として登場する。 同じキク科のアスターなどの園芸品が見ばえがよいせいか、ヨメナの園芸品はなく、あまり植えられない。カントウヨメナはヨメナより葉は薄く、果実の長さは約2.5mm、冠毛の長さは0.25mmで小ぶり、関東と東北地方に分布する。ユウガギクは本州(近畿地方から北)に分布。ともに日本固有である。