花粉

 
大きな花粉と小さな花粉
ほとんどの花粉は20〜50μm程度の大きさですが、 100μm以上もある大きな花粉があると思えば、10μm程度の小さな花粉もあります。
ハイビスカスの花粉は本当に大きく、ウニのようにたくさん刺をもっているのが特徴です。春先に多くの人を苦しめている花粉症の原因のスギ花粉は小さな角をもっているのが特徴です。春に綺麗な花で私たちを楽しませてくれるソメイヨシノの花粉は溝と孔が合体し、それを3つもっています。表面模様は縞模様で、バラ科植物の花粉は一般的に同じ模様です。クリの花粉はソメイヨシノと同じく、3つの溝孔をもっています。本当に小さな花粉です。
1:ハイビスカス、2:スギ、3:ソメイヨシノ、4:クリ。スケールは10μm。
 花粉はほかの微化石とは異なり、生物ではありません。花粉は単なる細胞です。しかし花粉は、植物が自分たちの子孫を残すためのDNAを託したカプセルであり、DNA情報を安全に運ぶための頑丈な細胞壁(花粉外壁)をもっています。この細胞壁は、花粉が湖底や海底などの低酸素環境に堆積した場合、分解されずに微化石となって何万年も残ることができます。植物に様々な形態があるように、花粉も大きさや形、発芽口、外壁の表面模様など変化に富み、その組み合わせで様々な形態となっています。細胞壁の形態は植物の系統とも密接なかかわりがあることがわかってきており、多くの場合、近縁の植物同士の花粉は形が似ています。このことを利用して、微化石となった花粉の細胞壁の形態から、その花粉のもとの植物の分類群を突き止めることができます。これを花粉分析と言います。植生は、暖かい地域と寒い地域で異なります。その違いがあるので、地層から検出される化石花粉の種類も異なってきます。さらに、各層準から検出される花粉化石の組成の変化から、植生の変化を読み取ることができます。植生の変化から、気候の変化や農耕による植生破壊の過程も知ることができます。たとえば、イネやトウモロコシの花粉を詳しく分析することで、その地域でいつから農耕が始まったのかの指標となります。
 

様々な形態をした花粉
植物に色々な形態があるように、花粉の形態も大きさや形、発芽口、外壁の表面模様などが変化に富み、その組み合わせで様々な形態となっています。
一般的に花粉の形は科や属で同じ形態をしており、花粉からどの仲間の植物のものか判別することができます。 花粉の形態は基本的に発芽口の形と数で分類されますが、粒数や気嚢数でも分類されます。
主な花粉の形態は図のようなものがあります。
1:マオウ(多ひだ型)、2:カラマツ(無口型)、3:オニユリ(単溝型・単長口型)、4:ススキ(単孔型)、5:オオムラサキシキブ(3溝型)、6:ゴマ(多環溝型)、7:ミズヒキ(多散溝型)、8:ウド(3溝孔型)、9:ワレモコウ(多環溝孔型)、10:ムクイヌビワ(2孔型)、11:トクサバモクモマオウ(3孔型)、12:オニグルミ(多環孔型)、13:アカザ(多散孔型)、14:サガリバナ(合流溝型)、15:シラタマホシクサ(合流溝型・螺旋型)、16:フトモモ(叉状合流溝型)、17:モモタマナ(不同溝孔型)、18:スイラン(小窓状孔型)、19:ヒメハギ(小窓状孔型)、20:ホロムイソウ(2集粒型)、21:ガマ(4集粒型)、22:ネムノキ(16集粒型)、23:ミズチドリ(花粉塊)、24:エビネ(花粉塊)、25:ツガ(単気嚢型)、26:アカマツ(2気嚢型)。スケールは10μm(24のみ1mm)。

世界三大穀物の花粉
世界三大穀物の米・麦・トウモロコシの花粉です。
球形で1つの孔(穴)を持っているのが特徴です。
大きさは様々ですが、イネ科植物の花粉はすべてこのような形態をしています。
この花粉を詳しく調べて、農耕開始の時期を調査しています
。 1:コシヒカリ、2:コムギ、3:トウモロコシ。スケールは10μm。