藍藻(らんそう)とは文字通り藍色の藻類のことで、他の藻類や陸上の植物と同じように、太陽エネルギーによって光合成を行う独立栄養生物です。しかし主要な光合成色素は、クロロフィルaとbを持つ被子植物などと異なり、クロロフィルaとフィコビリン類(フィコエリトリンとフィコシアニン)です。種類や生育場所によって色素組成が異なるため、藻体の色は藍色から赤色、青色、緑色、緑褐色、または黒色に近いものまで様々です。分類の項目で詳しく述べますが、藍藻の体制は単純で、単細胞か群体を形成するか、あるいは糸状体です。また、有性生殖は知られていません。

 さらに、藍藻は核という構造を持たない原核生物であるという点で、他の藻類や陸上植物と大きく異なります。そこで藍藻は原核生物の細菌類と同じ仲間と見なされ、最近ではシアノバクテリア、または藍色細菌と呼ばれることが多くなっています。一方、藍藻細胞と葉緑体は構造的にも機能的にもよく対応することから、藍藻は葉緑体の起源ではないかと考えられています。

 藍藻は海や陸の水域だけではなく、地表面や樹上にも広く生育します。また寒帯から温帯、熱帯まで、極地や高山から温泉にまで、非常に様々な環境に広く生育しており、他の生物と共生しているものもあります。

 33~35億年前の地層から、現在の藍藻に似た微化石が発見されていることから、藍藻の祖先は地球の酸素の生みの親と考えられています。地質時代の早期に出現した藍藻は、その形態をほとんど変えることなく生活域を広げ、今日まで生き続けています。その姿はまさに“生きた化石”と呼ぶにふさわしいものです。

 日本には藍藻類の分類・同定を行うための適当な入門書があまりありません。そこで、ここではこれまでに日本で報告された属の特徴と、頻繁に観察される種、大発生が記録された種などを中心にして、形の特徴と同定のポイントを記述します。

 以下に、浮遊性藍藻の各目の特徴を示します。

※下記の目名(太字)をクリックすると、各目の浮遊性藍藻を属レベルで分類するための特徴や、日本で記録された種についての形態の比較一覧表をご覧になれます。

1.クロオコックス目 Chroococcales Wettstein 1924

単細胞である(栄養細胞のみで構成される)。多数の細胞が多糖類の粘質を分泌し、規則的または不規則的に集まって群体を形成する。

2.ユレモ目 Oscillatoriales Elenkin 1934

細胞は一列に並びトリコームを形成する(栄養細胞のみで構成される)。異質細胞アキネートをつくらない。トリコームは分岐しない。

3.ネンジュモ目 Nostocales(Borzi 1914) Geitler 1925

細胞は一列に並びトリコームを形成する。異質細胞アキネートをつくる(栄養細胞異質細胞アキネートで構成される)。トリコームは分岐しない。

※藍藻は体制が単純で分類形質に乏しいので、種の同定にあたっては、細胞の形とサイズを詳しく観察しなければなりません。よって顕微鏡の取扱いには、光の強さや絞りの具合などを中心に十分に慣れておく必要があります。用いる顕微鏡は大学の生物学実習で使う程度かそれ以上の性能のものが望ましく、観察とサイズの測定には40~100倍の対物レンズを用います。
専門用語の解説

 アキネート

トリコームをつくる栄養細胞が貯蔵物質を蓄積し、大型化し、厚い膜をつくり、都合の悪い環境に耐えるために変化した細胞。耐久胞子あるいは単に胞子と呼ぶこともある。

 異質細胞

トリコームをつくる栄養細胞が透明感のある黄緑色に変化して、厚い膜をつくったもの。窒素分子の好気的固定のために特別に分化した細胞と考えられている。

 栄養細胞

光合成をして、2分裂によって増える普通の細胞のこと。

 トリコーム

細胞が連続的に、糸状に並んだものを藍藻ではトリコームと呼ぶ。トリコームが周りに粘質物を分泌し、鞘に被われた状態のものを糸状体と呼びトリコームと区別する。