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11月30日
3年ぶりのベトナム
乾季のため天気に恵まれた。同国立公園の馴染みのレンジャーと調査地へ向かう。
植物の多様性調査のため約3年ぶりにベトナムのビドップヌイバ国立公園を訪れました。以前、同国立公園内に、植物が花を咲かせたり、実をつけたりする季節的な変化を観察するための調査区を5つほど設置していたのですが、コロナ禍によって調査は中断されていました。観察記録が途絶えたことはとても残念でしたが、今回、以前の調査に一緒に取り組んだ旧友らと無事に再会し、今後の調査の再開・継続について議論ができ、とても有意義な調査となりました。
(植物研究部:永濱 藍)
11月23日
葉っぱにできた鈴の音
虫こぶ(直径約1cm) の中のカシワハスズタマバチ(CT画像:撮影後着色)
10月にタマバチの新種を発表しました。カシワハスズタマバチと命名したそのハチは、カシワの葉にまるで「鈴」のような構造の虫こぶをつくります。じつはこの虫こぶ、論文などでは触れていませんが、実際に手に取って、耳元で優しく振ってみると、カラカラと小さな音がします。虫こぶの形はタマバチの種類ごとに違っていて、ツノやトゲが生えた奇抜な外見のものもたくさんありますが、その内部構造のおもしろさにも改めて気づかされた研究でした。
(動物研究部:井手竜也)
11月16日
科学博物館の「もの」に向き合う国際会議
10月上旬、当館・日本館の講堂で「Artefacts XXVIII」という国際会議が開かれました。
「Artefacts」
とは、各国の科学博物館の関係者が集う国際的なコミュニティ。1996年に米国スミソニアン協会、ロンドン科学博物館、ドイツ博物館が中心となって発足して以来、欧米を中心に活動を続けてきましたが、このたび当館の理工学研究部がホストを務め、初のアジア開催となりました。
プログラム
には、専門的な討議だけでなくArtefactsの「伝統行事」であるいくつかの企画も盛り込みました。たとえば科学技術系の展示を研究者が解説して回るガイド・ツアーでは、展示の企画意図から作成経緯、苦労話に至るまで、様々な質問が飛び交いました。また、各博物館の関係者が展示・コレクションに関する近況の報告と問題共有を行う企画も行いました。さらに今回、初めての試みとして一般公開のセッションを設け、
「『われわれはどこから来て、どこへ行くのか』——そのストーリーと新たな博物館の可能性」
と銘打ち、国内外の知識人・キュレーターにご登壇いただきました。企画開始から足かけ2年、直前まで怒涛の準備に追われ、うまくいくだろうかという不安もありましたが、いざ始まってみるとそんな気持ちはすぐに吹き飛び、あっという間に終わってしまいました。科学博物館は、科学や技術にまつわる「もの」の収集・保存・展示・研究を行う存在です。「もの」と向き合う仲間たちと繋がること。国際的な水準で仕事をすること。色々な学びを得た、実りある秋になりました。
(理工学研究部・河野洋人)
11月9日
日用品のコケ採集用具への転用
ミャンマー調査での使用例(日本の有名生活用品店でも販売されているコットンメッシュバッグ)。乾燥中の維管束植物標本の上でコケの標本を一緒に乾燥させてもらった。
コケ植物の野外採集では、採ったコケを紙製の採集袋に1点ずつ入れるのが基本です。コケ入りの採集袋がある程度たまってくると布袋などに一時的にまとめて持ち歩きますが、この袋として幅45cm、長さ40cm程度の綿製メッシュバッグが転用できることに気づきました。通気性に加えて適度な伸縮性があり、数十点の採集袋をまとめて入れるのにちょうどよいサイズです。今年6月のミャンマー調査に携えていったところ大変重宝しました。
(植物研究部:井上侑哉)
11月2日
セアカゴケグモが侵入できない場所はない!?
皇居内でのセアカゴケグモ発見場所(草本間に造網)と発見個体
一般に広く知れ渡った外来種のセアカゴケグモは、現時点で青森県、秋田県以外の45都道府県から記録があります。この度皇居内からも本種が発見されました。ただし発見個体は1個体のみで、当館の総合研究テーマとして行っている皇居の生物相調査において発見直後に実施した詳細な調査ではそれ以上見つからなかったため、定着はしていないと考えられます。車両やその運搬物に付着して分布拡大していることは既に分かっていますが、まさか皇居内にも侵入するとは意外でした。発見個体はちょうど開催中の皇居の生き物を紹介した
企画展「皇居の生き物たち―環境変化で何が起こっているのか?—」(明治安田ヴィレッジ丸の内1階アトリウムにて11月5日まで開催)
でも展示しています。
(動物研究部:奥村賢一)
10月26日
分子模型いまむかし
パリトキシンの3Dプリント分子模型
分子模型と聞くと、どんなものを想像するでしょうか。おそらく球状のパーツ(原子)を棒状のパーツ(結合)でつないだ模型が思い浮かぶでしょう。最近では、3Dプリント技術によって精密な分子模型をつくることができるようになりました。昔ながらの分子模型では手を動かして簡単に構造を調整できる一方、3Dプリント模型ではモデルデータ作成がなかなか複雑で、モニターを眺めながらパソコン上で分子の3次元構造を考える必要があります。3Dプリント模型の精密さや迫力には驚かされますが、同時に昔ながらの分子模型の直感的な理解のしやすさを実感します。
(理工学研究部:林 峻)
10月19日
化石をブラストする
砂などの粒子を圧縮空気で吹きつけ塗装や錆を落として下地を整えるサンドブラストは、今や我々の研究室では化石のクリーニングに不可欠な手法です。サンドブラスターは30年ほど前に一時普及し、ほとんど全ての博物館が所有しているはずなのですが、当時はメディア(研磨剤)をあまり選べなかったため削れすぎてしまう欠点があり、瞬く間に使われなくなってしまいました。ブラストで大事なのはエア圧の調整と、吹き付けるメディアの種類・サイズの選定です。当館には海外の例を参考にして15年ほど前に導入され、軟鉄とクルミの粉などをブラストすることで、クリーニング革命と言えるほどの成果が得られてきました。それでもまだ不満があるのです。もっと細かく、もっと繊細に、より微細なメディアを実体顕微鏡下でブラストをできないものか?そこで、安価な海外製ブラスターを購入。太すぎるノズルを自作品に交換して、再生した顕微鏡をインストール!役者が揃ったところで顕微鏡を覗きながら50 µm径のパウダーをごく低圧で吹いてみると…なんということでしょう、既存のブラスターとメディアではどうにも剖出できなかった「難物な標本」の細かな刻みが見えるではありませんか(図の右にある矢印)!都合4万円で繊細なブラストを実現できました。まだまだ改良の余地がいっぱいあるので、少しずつアップデートして使い倒そうと画策しています。
(地学研究部:芳賀拓真)
10月12日
植物園バックヤードは研究の最前線
ゴダワリ植物園のバックヤード入口
先日、ネパールのゴダワリ植物園を視察してきました。園内には多くの人々が訪れ、生きた植物を前に学びを深めていました。日本で見かけない植物も多く見られましたが、学名や分布、利用法などがまとまった親切な樹名板に助けられました。非公開エリアであるバックヤードでは、スタッフが嬉しそうに、今年、新しい種名を発表したというバショウ科の植物を見せてくださり、多様な植物の謎に挑む同志の存在に感激しました。当館の筑波実験植物園とのコラボレーションも乞うご期待です。
(植物研究部:水野貴行)
10月5日
忍び寄るAI
”AlphaFoldによる、ある非モデル微生物のアクチンの構造予測(Nature 596, 583–589 (2021))”
人工知能と呼ばれる技術が注目を浴びています。こちらの文章を読んでいる皆さんにも対話型や生成型のAIを利用する方がいるかもしれません。自然科学系の研究者はフィールドを駆け回ることも多く、その労力が減るものではないでしょうが、AIの助けも多くなってきました。私は計算科学を専門の一分野としていますが、これまでとはまた違った影響をAIから受けています。最近特に驚いたのは、ディープラーニングによるタンパク質の構造予測です。これまで数年はかかっていた構造予測が数時間で収まるようになってしまいました。実データを大事にしつつ最先端を追随するのはおじさんには大変ですが、温故知新、ついて行こうと思います。ちなみにこの文章は自分で書いた後、AIに放り投げて一度添削してもらいました。結果、非常に平坦な文章になってしまいイマイチでした。やはり使いようが大事です。。。
(動物研究部:谷藤吾朗)