館長あいさつ
篠田 謙一

2019年に発生した新型コロナウイルス感染症の流行は、当館の調査・研究、標本・資料の収集・保管・活用及び展示・学習支援活動にも非常に多大な影響を与えました。しかし本年5月には新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけも変わり、制度的には本格的なポストコロナの時代が始まりました。今後は新たな博物館活動が始まることになります。

当館では、コロナ禍で行ってきた様々な取り組みの中で、今後の博物館活動として定着させていくべきものは何であるのかを見極めると同時に、実際に足を運んで体験していただく展示の意義や重要性についても改めて見つめなおし、今後の活動に生かしていくことにしています。

これまで中止・延期としていた展示やイベントを徐々に再開し始めているところですが、同時に過去にはない新たな取り組みを行っています。例えば、3月にはVR空間上にバーチャル展示室「たんけんひろば コンパスVR」を開設しました。これは、VR技術を活用することで、移動が困難な資料の紹介や、実際の展示室では体験が難しい音声を伴った展示体験を可能にするものです。コロナ禍以降、新たに加えたYouTubeやInstagramといったSNSによる情報発信を継続するとともに、各地の博物館、民間企業等と連携して2021年から開催している巡回展「ポケモン化石博物館」及び「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」も、引き続き実施していきます。

当館ではコロナ禍の3年間、さまざまな試行を行う中で、これからの博物館のあり方も模索してきました。それをまとめる形で館長ビジョンとして、「科学を文化に」という目標を設定しました。その実現を目指し、職員一同さらなる発展に向けて挑戦を続けて参ります。引き続き、皆様からのご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


2023年4月
独立行政法人 国立科学博物館長
篠田 謙一