館長あいさつ

館長あいさつ

国立科学博物館は、今年度、第5期中期目標(令和3(2021)年度~令和7(2025)年度)の最終年度を迎えます。この期をふり返ってみると、最大の出来事として令和5(2023)年に実施したクラウドファンディングが挙げられることは間違いありません。当館の活動の中核であるコレクションを守り、その収集と保管の体制を充実させるための資金を確保する目的で実施した活動でした。これまで当館が行ったクラウドファンディングでは最高額となる1億円を目標に開始した挑戦で、成功を危ぶむ声もありましたが、募集終了時には9億円を超えるご支援をいただきました。目標額を大幅に超えたことに加え、多数の応援メッセージが大きな励みになりました。職員一同がコレクションを守るという責務に対しあらためて身が引き締まる思いでおります。

この寄付金をもとにして、博物館が標本・資料を収集する意義を知っていただく機会の拡充に向けて、国内の科学系博物館を対象に当館の標本を基にした巡回展を開催することにしました。「地球の宝を守る」ために全国の博物館と協働できればと考えています。

当館は2027年に創立150年を迎えることから、今年度は将来を見据えた活動をスタートする年でもあると考えており、4月に研究部の組織改編を行いました。これまで5研究部と3センターとしていた研究部の組織を、4研究部(動物研究部、植物研究部、生命史研究部、理学研究部)と3センター(産業技術史資料情報センター、標本資料センター、分子生物多様性研究資料センター)という体制に変更しました。

クラウドファンディングの成功で、標本の収集・保管の問題にある程度の目処が付きましたので、今年度より常設展の改修計画を進めていく予定にしています。今回の改修は科学技術の発展と地球環境問題への対応に主眼を置いたものにする予定で、新たな研究部の体制で取り組んでいくことになります。引き続き当館の活動に注目いただければと思います。

2025年4月
独立行政法人 国立科学博物館長
篠田 謙一

館長

館長ビジョン

科学を文化に

これからの科博は、人びとが常に科学に関心を持ち、自ら情報をアップデートしていく社会を作ることをミッションに加えます。そのためには、科学を学校教育の中で授けられるものから、生涯にわたって自分の興味や関心で受け入れていくものにすることが必要です。人びとが科学を芸術と同様に人生を豊かにするものと認識できるようにすること、科学を文化として捉えることができるようになるための活動を行っていきます。

篠田館長ビジョン実現に向けた取り組み

「科学を文化に」の実現に必要なこと、それは人びとが科学を信頼し、身近に感じられることです。 そのためには、人びとに、科学の楽しさや知識だけでなく、日々の生活において物事を科学的に考えることの 大切さを伝えることが重要であると考えます。私たち科博は、これらのことを伝えられる「科博の研究者の育成」を強化するとともに「社会に向けた新たな活動」を実践することで、「科学を文化に」の実現を目指します。

科博の研究者の育成

「科博の研究者」の役割は、ハイレベルな調査・研究だけではありません。
「科博の研究者」は、企画展示や学習支援活動を通じて研究の意義や科学のおもしろさを伝え、誰もが科学的な考え方ができる社会の実現に貢献します。
また、科博は将来の研究者育成を支援し、「科学を文化に」の継承を託します。

社会に向けた新たな活動

研究成果や社会状況に基づいた展⽰内容のアップデート、⼦どもも⼤⼈も参加できる学習⽀援活動の強化、他の博物館や美術館、社会教育施設、⺠間企業等との連携強化など、皆さんが科学をより⾝近に感じられるよう、科博と出会う機会を広げます。

3つの主要事業の発展
3つの主要事業の発展

「研究者の育成」・「社会に向けた新たな活動」の推進により、創立以来科博が進めている3つの主要事業をさらに発展させ、地球と人類の望ましい関係について皆さんとともに考え続けます。