2008-09-25

マリントキシン−毒を持つ魚介類に注意!− (協力:コレクションディレクター 松浦啓一)


貝の種類に依らない危険−貝毒

 私たちが身近に食べている貝も,時に毒化することがあります。シガテラと同じく有毒の渦鞭毛藻を貝が捕食し,体内に毒を蓄えることが原因です。
 海水温が上がり始める4月,5月の発生が多く,シガテラ・フグ同様加熱によっては無毒化できず,汚染されても貝の味や臭いは変わりません。

 日本で発生する貝毒には,下痢性・麻痺性の2種類があり,原因となる渦鞭毛藻が異なります。
 下痢性貝毒は渦鞭毛藻Dinophysis fortiiを原因とし,ホタテガイ・ムラサキイガイ・アサリ・ホッキなど多くの二枚貝で発生の危険があります。
汚染された貝を口にしてから30分〜4時間以内に下痢・吐き気・嘔吐・腹痛などの消化器系の症状が出ます。魚介類を原因とする食中毒のひとつ,腸炎ビブリオと似た症状ですがビブリオにはある発熱がこちらにはありません。
 治療法は特にないため脱水症状を起こさないよう気をつけながら耐えるほかありません。死亡例はなく3日以内に回復します。

 一方の麻痺性貝毒は渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseGymnodinium catenatumが原因で起こります。ホタテガイ・アサリ・カキ・ムラサキイガイなどで発生し,北海道では養殖ホタテが,広島では養殖カキが毒化したこともあり,問題になっています。
 有毒物質はサキシトシンで,テトロドトキシンと同様に細胞内へのナトリウムイオンの取り込みを妨げる作用があります。
 症状もフグ毒と似ています。摂取から30分程度で舌や顔面が痺れ始め,手足へと広がります。軽症の場合は24〜48時間で回復しますが,重症の場合は運動や言語に障害が現れ,呼吸困難で死亡することもあります。フグの場合と同じく胃の洗浄と人工呼吸で事態の改善が期待できます。

 都道府県の水産担当部局では,冬の終わりから定期的に,海水中の渦鞭毛藻や貝類の毒量の調査を行っています。基準値を超えた場合には出荷停止の措置がとられ,貝自身の代謝によって毒が排出されるまで(※2)の間継続されます。
 このため市場に出回る貝で貝毒が起こることはほぼありませんが,潮干狩りなど自分で採集する際にはその海域が危険とされていないかどうか十分に情報を収集する必要があります。

※2 毒は人間など脊椎動物では肝臓にあたる,中腸線と呼ばれる器官に蓄積されています。


(研究推進課 西村美里)