2012-12-25

小さな化石から様々な情報が読み取れることをご存じですか?


復元された前期三畳紀の海水温































P/T境界における大量絶滅を示すグラフ(地球館地下2階の展示)



 2012年10月19日発行の米国科学誌サイエンスに前期三畳紀の海水温が40度に達していたということを述べた論文が発表されています。この海水温はコノドントを分析して推定されたもので、現在の感覚からすると非常に高い温度です。現在もっとも表層海水温が高い地域はニューギニアやインドネシア沖の西赤道太平洋にあり、そこにおいても30度程度です。また、現在の植物にとって40度は生存を脅かすほどの高温です。35度を超えると自身が光合成で有機物を作り出す速さより光合成で作られた有機物を消費する速さが大きくなり、成長ができなくなります。植物の大半においては、30度を超えると光合成自体が不活発になるとされています。

 この40度の海水温が推定された前期三畳紀をさかのぼること200万年。いまから2億5千万年前のペルム紀/三畳紀境界には、化石記録として残されている時代において最大の大量絶滅が起こったとされます。絶滅率は海生無脊椎動物の種のレベルで90パーセント以上にもなると見積もられています。この要因として、シベリアで大規模な火山活動が起こり、それによって放出された二酸化炭素によって急激な温暖化が起こり、海洋が撹拌されにくくなって海に溶け込む酸素が現象したこと(海洋無酸素事変)などが重要視されています。

 三畳紀はこの大量絶滅の直後の時代にあたり、生態系がどのように回復していったのかが研究されています。サイエンス誌に掲載された論文を読むと、この生態系の回復過程もすみやかにというわけではなかったのかもしれないと思えてきます。40度の表層海水温は現在の地球上の生物にとって高すぎると思われるだけでなく、当時の生物にとっても適切でなかったのではないかと推定されています。当時はパンゲアと呼ばれる超大陸が北半球の高緯度から南半球の高緯度まで続いていました。その真ん中にあたる赤道周辺の低緯度域からは、魚類、海生ハチュウ類、四足動物の化石の産出が少ないことが分かっているそうです。