2012-12-10

光合成する植物と光合成しない植物の雑種が世界ではじめて開花


へんな雑種ができるまで

 生物が種をこえて交雑し子供が生育することは、簡単ではありません。ましてや光合成をするかしないかという、栄養を作る仕組みのまったく違う種の雑種を作ることはとても難しそうです。

 そこで作戦を練りました。できる限り縁の近い2つの種類を選んで交配すれば、遺伝子に共通する部分が多いので雑種の開発が成功する可能性は高くなるはずです。光合成する植物としない植物でこうしたペアがないか調べたところ、マヤランはスルガランなどの光合成するシュンラン属と遺伝的な違いがわずかしかないことが分かったのです。ここがポイントで、世界中の光合成しない植物の中で、光合成する植物との遺伝的な違いがわずかである種はほとんどありません。また多くの光合成しない植物は栽培できなかったり、稀少なため見つけることができないなど、交配すること自体が難しいのです。

 10年くらい前からなんどか交配を繰り返し、ようやく2006年8月、交配に成功しました。発芽した66本の苗の生育はいたってマイペースで、ちょうど6年たった今年の8月、最初の花が咲きはじめたのです。

 いま雑種の花を交配して次の世代を作ることを試みています。2代目が育てば、個体ごとの性質と遺伝子の関連を調べて、「根も葉もない」世にも奇妙な植物の進化を解き明かすことが期待できます。