2008-10-23

速報:ノーベル化学賞受賞:緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と開発 (協力:理工学研究部 若林文高・動物研究部 並河洋・植物研究部 細矢剛)


2008年ノーベル化学賞

 10月8日,前日のノーベル物理学賞発表に続く吉報が,再び日本に飛び込んで来ました。2008年ノーベル化学賞が,アメリカ,ウッズホール海洋生物学研究所およびボストン大学の下村脩名誉教授,コロンビア大のマーチン・チャルフィー教授,およびカリフォルニア大サンディエゴ校のロジャー・チェン教授の3名に授与されることが発表されたのです。

 日本人の化学賞受賞は,2002年に島津製作所の田中耕一フェローが「生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発」で受賞されて以来6年ぶり5人目になります。

 下村氏は1961年,アメリカ,シアトル郊外の臨海実験場で,オワンクラゲ(ヒドロ虫綱,Aequorea victoria,※1・※2)から,紫外線が当たると緑色に光る「緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein; GFP)」を発見しました。
 それからおよそ30年後,チャルフィー氏のグループが遺伝子操作によってオワンクラゲ以外の体内にGFP遺伝子を導入し,他の生物の体内でタンパク質を光らせることに成功しました。チェン氏は更にその手法を発展させ,緑以外のさまざまな色でしかも効率よく光らせることに成功しています。
 これらの成果によって生物体内の細胞内でのタンパク質の動きを視覚的に追うことが可能になり,細胞の機能や病気発症のメカニズムの解明に広く貢献しています。

※1 和名でひとくちに「クラゲ」と呼ぶ時,そこには刺胞動物門のヒドロ虫綱・箱虫綱・鉢虫綱,また広義には有櫛動物門の有触手綱・無触手綱が含まれています。詳細はここでは割愛しますが,私たちに馴染みの深い大型で厚い傘を持つクラゲ,エチゼンクラゲやミズグラゲなどは鉢虫綱,お盆過ぎに海水浴場に現れるアンドンクラゲは箱虫綱です。

※2 オワンクラゲは日本沿岸でも春から夏に多く見られます。お椀を逆さに伏せたような形の傘を持ち,傘の直径は10センチ程度から,大きいものでは20センチほどになります。傘からは100本近い触手が伸びています。肉食で,傘の中央にある口を大きく広げて他のクラゲや小魚を丸呑みします。刺激を受けると傘の周辺部分が緑色に光りますが,この発光がクラゲにとって何の意味を持つのかは未だ判っていません。

写真:オワンクラゲ(Photo by Sierra Blakely)
参考:クラゲガイドブック 並河洋(著)/楚山勇(写真) TBSブリタニカ


より詳しく知りたい方のために
ノーベル財団(英文)