2010-05-15

孤島に生き残っていた小型人類ホモ・フロレシエンシスの謎


精巧な復元像完成!---- 小さかった私たちの仲間

生体復元展示が出来るまで、どのようなプロセスがあったのでしょうか?

■ ホモ・フロレシエンシスを復元する!
 LB1(タイプ標本であるもっとも保存の良い骨格のリャンブア1号)の生体復元は、既にフランスやアメリカなどでも製作されています。国立科学博物館でも、人類研究部の研究者が、その研究成果に基づいて当館オリジナルの復元を作成しました。

 担当したのは海部研究主幹、坂上研究員、馬場名誉研究員です。実際にジャカルタの研究所で骨の長さや間接の大きさなどを計測し、できる限り忠実に再現しました。一部の大きさは推定しなければなりませんが、例えば仙骨が見つかっていないLB1の腰の幅は、まず猿人ルーシーの仙骨で代用し、次いでこれを原人モデルに変換して若干幅を縮めることによって決めました。身長については、大腿骨の長さを現代人の推定式に当てはめた106cm弱という値がありますが、科博の復元では2つ残っていた椎骨から脊柱の長さを推定し、身長を110cmとしました。

■ 復元の流れ
1月13日 復元のための最初の打合せ。姿勢や場面設定について決め、基本情報を製作側に渡した。
1月29日 一次原型の作成過程でいくつかの問題点が浮上。
2月8日  問題点解決のため、ジャカルタの研究所にてホモ・フロレシエンシスの骨格形態を再検討した。
2月12日 検討結果を持ち帰って、腰幅を狭くするなどの修正を行ったたが、さらに問題点がみつかる。
3月1日  最後の修正を終え、全体の最終確認を行った。これで一次原型の完成。
3月20日 髪型を整えて復元が完成。展示室に設置

 骨だけから生きていたときの姿全てはわかりませんが、このように、可能な限り科学的根拠のある復元となるよう努力しました。頭骨にあるゆがみ、足の小指がない、怪我をしている骨からもわかる情報は、復元に反映させました。

 今回復元されたホモ・フロレシエンシス像は女性ですが、実は、LB1の骨格化石が、女性か男性かはっきりわかっているわけではありません。初めての論文報告で女性と推定されたので、科博でもこれを尊重して女性として復元しました。背景となっている動物の復元画は、オランダの専門家の監修を受けて描きました。

 展示の復元の設定は?・・「フロレシエンシスが石器を使って巨大ラットを解体しているところに、突然巨大ハゲコウが現れたので、緊張感ただよう中その様子をうかがっている」というのが場面設定です。LB1は見上げる姿勢をとっているので、ちょうど来館者の方と目線が合うようになっています。是非、常設展示をご覧になってください。

監修/協力: 国立科学博物館 人類研究部 海部陽介
参考: 常設展改装記念講演会講演内容
※常設展改装記念講演会は、平成22年4月17日(土)に会場:国立科学博物館 日本館2階講堂にて開催されました。

■ 講演会の講演題目
「フロレス島における国際共同研究プロジェクト」
  トニー・ジュビアントノ博士 (インドネシア・国立考古学研究センター・所長)
「ホモ・フロレシエンシスの発見: リャン・ブア洞窟の発掘調査」
  トーマス・スティクナ博士(インドネシア・国立考古学研究センター)
「ホモ・フロレシエンシス: その調査と発見の意義」
  マイク・モーウッド博士 (オーストラリア・ウォロンゴン大学・教授)
「科博で蘇ったホモ・フロレシエンシス:リャン・ブア1号の生体復元展示」
  海部陽介・馬場悠男・坂上和弘(国立科学博物館人類研究部)