2009-10-15

ヒトの進化を遡る ― 新発表『ラミダス猿人』化石 (協力:人類研究部 河野礼子)


『アルディ』を復元する

 アルディピテクスに限ったことではありませんが,土の下で長年眠り続けてきた化石や遺物の多くは,地上に掘り出された時,土の重さで割れたり押し潰されたりして元の形を失っています。

 アルディの場合も例外ではありませんでした。例えば頭骨では下顎と一部の歯はくっついていたものの,目の周りや鼻にあたる部分は割れており,本来丸いはずの頭蓋は潰れて平らになっていました。
 アルディの姿を復元するため,研究者たちはまずこれ以上骨が壊れないよう補強する処理を行いました。続いて骨をCTスキャンに掛け,パーツ1点1点をばらばらに分離して記録しました。
 パーツのデータはコンピューター上で立体パズルのように組み立てられ,ほとんど平らに近い状態から,三次元のアルディの骨の形が初めて浮かび上がってきました。
 しかしこれでは,未だアルディの『絵』に過ぎません。画像データを三次元プリンターで『印刷』することで,実際に手にとって観察できる模型をつくることができます。

 三次元プリンターは光を当てると固まる液状のアクリル樹脂を土台となる平面に吹きつけ,層状に塗り重ねることで立体を作ります(※2)。2種類の樹脂を使い分けることによって,本来作りたい形は強度のある樹脂,作るべき形以外の部分は別の材質の,手で割れる程度の脆い樹脂で製作しています。
 作るべき形以外の部分ができてしまうのは,樹脂を下から上へ積み重ねる製法のため,下の層が塗られていないところには上の層をつくることができないためです。例えば頭骨の内側など立体的に囲まれた空間を表現したい時には,空白にする代わりに脆い樹脂で下層を埋めておき,後でその部分を取り除きます。

 1層の厚さはおよそ0.02ミリ。アルディの頭骨をひとつ造るのに約18時間必要です。骨盤はサイズが大きいため,約37時間掛かります。プリンター自体は自動ですが,樹脂を足したりオーバーヒートしないよう温度を管理したりする必要があるため完全には目を離せません。

 このようにして復元されたアルディの頭骨と骨盤が,現在東京大学総合研究博物館に展示されています。東大での展示終了後,引き続き科博でもNEWS展示として公開の予定です。

 まとめ

 @ 発掘された時の化石はしばしば潰れたり,壊れたりしています。
 A CTや3Dグラフィックなどを利用し,実物化石を傷つけることなく復元・研究ができます。


※2 ここでは今回の研究で使用された機種に限定して解説しています。このほか石膏を使うタイプのもの,出来上がった立体に色をつけることができるものなど,用途に合わせて様々なタイプがあります。

写真:三次元プリンター

(研究推進課 西村美里)