2009-10-01

国際宇宙ステーションへ HTV打ち上げ・初補給に成功


HTVが果たす役割

 今回の打ち上げ・補給の成功は日本の宇宙開発のみならず,ISSの組み立て・運用に対しても大きな意味を持ちます。

 ISSへの組み立て資材・補給物資の運搬は,これまでアメリカのスペースシャトル,ロシアのプログレス,ヨーロッパのATVの3種の補給機が担ってきました。
 スペースシャトルは3種のうち最大の,約14トンの輸送力を持ちます。ISS内部用・外部用の両方の物資を運ぶことができ,同量の荷物をISSから地球に持ち帰ることもできます。しかし来年,2010年を最後に引退が決まっており,シャトルでの輸送を前提に作られた部品を今後どうするのかなど不安の声が聞かれています。
 プログレスの輸送力は約2.5トンと他より小ぶりですが,ロシアの宇宙ステーション『ミール』の時代から使われて来た歴史ある補給機です。3〜4ヶ月に1度の頻度で打ち上げが可能で,『コロンビア』号の空中分解事故以降スペースシャトルの打ち上げが中止されていた時期には唯一の補給手段ともなりました。
 ATVは2008年に登場したばかりの新しい補給機で,7.5トンの輸送力を持ちます。しかしプログレスと同じドッキングポートを使っている関係上,搬出・搬入用のハッチの大きさもプログレスと同じく直径0.8メートルにならざるを得ず,体積の大きい物資の搬出入はできません。

 これら3種の補給機は,HTVの与圧部と同じく,ISSとのドッキング時(スペースシャトルは常時)には宇宙飛行士が宇宙服なしで乗り込んで作業することができます。一方,ISS船外で使用する資材を輸送できる機体はスペースシャトルが唯一でした。

 HTVの輸送力は6トン。与圧部と非与圧部が揃っており,搬出・搬入口の大きさは1辺が1.2メートルの正方形になっており,プログレス・ATVと比べ,より大型の資材の搬出が可能です。
 ドッキングにはプログレスなどが使用するポートとは異なり,モジュール同士の結合などを目的とした共通結合機構を使用しています。共通結合機構には自動ドッキングに対応した誘導装置がつけられていませんが,ポートに比べてハッチが広いことに加え,船外用資材を取り出すためのロボットアームが傍にあることも利点と言えます。

 ISSが飛行している軌道は,地上からの高度およそ400キロメートル。『宇宙』ステーションと呼んでいますが,正確に言えば地球の大気の内側(熱圏)です。大気の密度は太陽の活動の強度に比例して増減するため,影響の大きさを一律にはお伝えできませんが,ISSと地球大気の間には程度の差はあれ常に摩擦があり,ISSの飛行速度は下がり続けています。そのまま放置しておけば,ISSの高度は下がり,やがては地上に落下してしまいます。
 これを防ぐためISS自体とHTV以外の3種の補給機は,スラスターを使ってISSの速度を上げ,地上高度を上昇させる「リブースト」の機能を備えています。ISSの建設開始当初は主にスペースシャトルがその任に当たりましたが,現在はISSの進行方向後方にドッキングするプログレスが主な担当となっており,プログレスよりも推進力・燃料積載量共に優れるATVも今後の活躍が期待されます。
 共通結合機構がISSの進行方向前方に位置しているため,HTVにはリブーストの機能はありません。

 HTVは,2010年に迫ったスペースシャトル退役後,大型の物資,及び船外用の物資を運搬できるただひとつの輸送機となります。他の補給機と役割を住み分けながら,今後も1回1回の打ち上げ,補給を確実にこなして行くことが求められています。


 まとめ

 @ 各補給機にはそれぞれ特徴があり,得意なこと,できないことがあります。
 A 違いを生かして役割を分担し,着実にこなして行くことが求められます。


表:各補給機の主要な仕様