2008-08-20

ゲリラ豪雨と積乱雲−突然の雨・雷に注意!− (協力:理工学研究部 前島正裕)


積乱雲を追跡する

 発生からごく短時間で発達,落雷・降雨へと進む積乱雲。この積乱雲の発生を予測し,被害を防ぐ,或いは軽減させる方法はないものでしょうか?
 積乱雲による豪雨や雷は,台風を含む低気圧や前線の活動とは関わりなく発生するため,場所を特定することは容易ではありません。

 気象庁では2005年から随時,全国の気象レーダーをドップラー・レーダーに更新し,これまでの気象レーダーでは捉えることの難しかったより詳細な気流の流れや雲の動きを把握することを目指しています。
 通常の気象レーダーは観測対象に向けて電磁波を放射し,雨粒や雪,霧の粒子などに反射・散乱されて戻ってくる電磁波を観測することで雲の位置や密度を捉えています。
 ドップラー・レーダーではこれに加えて,放射した電磁波と戻って来た電磁波の周波数の違いを観測します。移動している物体から発生する光,音などの波は,発生源が近づいている場合には周波数が高く(波長が短く),遠ざかっている場合には周波数が低く(波長が長く)なります。これをドップラー効果といい,ドップラー・レーダーではこれを利用して,雲自体の動きに加え雲の内部の粒子の動きから雲内の風の流れを観測しています。1ヶ所のレーダーでは平面的な情報しか得ることができないため,通常は2ヶ所以上のレーダーから得られた情報を解析し,風向や風速を立体的に推定しています。
 気象庁が所有する全国20ヶ所のレーダーのうち,現在約半分の11ヶ所がドップラー・レーダーに更新済です。これにより,より細かい範囲の気流の状況が予報に反映され,集中豪雨などの予報の精度が高まると期待されています。

 現在の気象予報の方法は,『メソ数値予報モデル』という計算プログラムが使用されています。日本周辺の大気を1辺がそれぞれ5kmの仮想の立方体で分割し,立方体の頂点ごとに気温・風速などの現在の気象データを元に将来の状態を計算によって予測します。計算は3時間ごとで1日8回行われ,現在を基準に15時間後までの予報を発表しています。
 このモデルでは大気を区分けしている立方体が大きすぎ,およそ25km規模の大気の動きしか掴むことができません。ゲリラ豪雨をもたらしている積乱雲は数kmから10km程度のスケールであり,予測のためにはより細かな区分けで計算していく必要があります。
また3時間に1回では,10分から数十分で発達することのある積乱雲を予測するには間隔が短すぎます。
 そこで気象庁では平成12年度を目処に,11年度に導入予定の新しいスーパーコンピューターを使った『局地予報モデル』の開発を目指しています。局地予報モデルでは立方体の1辺を2kmに縮め,計算の間隔も1時間に1回となる予定です。

 また民間の気象会社では,携帯電話で登録した会員から会員が今いる位置の雲の状況や写真を送って貰い,積乱雲の発生・発達や進行方向を予測しています。急激な天候の変化が予測される地域の会員にはメールで警告します。
 筆者も時々利用していますが,自分の近くの雨雲の位置,雲の移動する方向と速度,現在の雨の強さなどを詳しく見ることができます。直線距離で10kmと離れていない自宅と外出先との状況を比べて,外出先は蒸し暑い曇り,自宅周辺だけが雷を伴う大雨だった時にはその局地的な降り方に驚かされました。

 繰り返しますが現在のところ,ゲリラ豪雨の発生,接近を正確に予報できるシステムは存在しません。リアルタイムの気象データは現在の状況を教えてはくれますが,具体的な対策や避難を指示してくれる訳ではありません。
 少しでも『何かおかしい』と感じたら,早めに情報を収集し,身の安全を第一に行動するようにしてください。


(研究推進課 西村美里)


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