2008-07-01

特定外来生物セアカゴケグモ (協力:動物研究部 小野展嗣)


特定外来生物とは

 前項でも少し触れたとおり,人間の活動の国際化によって国境を越えて運ばれる,持ち込まれる外来生物が近年大幅に増えています。
 日本にやって来る生き物の中にも,人間に直接害を及ぼすもの,農作物に被害を与えるもの,日本固有の生態系を乱し或いは破壊する可能性があるものなど,好ましくない影響を与えるものが複数あります。
 そのような生物の防除や管理を目的として,平成17年6月1日,『特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)』が施行されました。この法律は外来生物のうち上に挙げたのような問題を引き起こす生物を特定外来生物として指定し,その生物の飼育・栽培・運搬・輸入などが規制されます。生きているものに限られており,個体だけでなく卵や種,器官なども含まれます。

 釣り魚・食用魚として全国の湖沼に持ち込まれ,在来の魚を捕食することで問題となった北米原産のオオクチバス,コクチバス(通称ブラックバス)は現在,釣った現場でそのまま放流するキャッチ・アンド・リリースを除く新たな放流が禁止され,卵や稚魚を回収する,食材としての消費を促すなどの駆除策がとられています。

 同じく北米原産のアライグマは,特に1980年代以降,ペットとして大量に輸入されました。しかし可愛らしい外見とは裏腹に成体になると凶暴な個体も多く,し尿の臭いが強いなど飼育が難しいため,各地で捨てられ,野生化しました。雑食性のアライグマは小型の哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類・昆虫類などの動物,野菜・果物・穀類などの植物の両方を幅広く餌としています。このため特に北海道では,在来の固有種であるニホンザリガニやエゾサンショウウオの減少,トウモロコシや果物への食害など大きな被害が出ています。

 毛皮用として輸入されたものが後に捨てられて野生化・定着したヌートリアは,南米原産です。餌となる水生植物をめぐって水鳥などとの競合が心配されるほか,イネや葉野菜など農作物への食害,水辺を好んで巣をつくるため水田の畔を破壊することがあるなど,特に西日本で大きな問題となっています。

 特定外来生物に指定するか否かが大きな論議となったのがセイヨウオオマルハナバチです。トマトを中心にナス,イチゴなどのハウス栽培,サクランボやリンゴなどの露地栽培で受粉者として利用されており,労力の削減,ホルモン剤の節減に大きな恩恵をもたらしてきました。その一方で日本在来種のマルハナバチと比べて,在来種の受粉を行わず花弁の側面に穴をあけて蜜だけを舐めとる「盗蜜」の頻度が在来種より高いため野生植物の種子生産を阻害する,女王蜂が活動を開始する時期が早いため巣作りの場所をめぐる競争に有利であるなどの理由から在来のマルハナバチ,野草双方への影響が心配されてきました。特に北海道のエゾオオマルハナバチは,セイヨウオオマルハナバチとの競合により大きく数を減らしたと考えられています。
 こうした状況を鑑み,法施行から1年3ヶ月後の平成18年9月,セイヨウオオマルハナバチは特定外来生物に加えられました。農業に使用されているハチは,野外に逃げ出さないよう出入口にネットを張るなどの対策を取ったハウスの中に限って,許可を得たうえで引き続き使用することができます。


 このように多くの生物が日本に持ち込まれる一方で,日本から持ち出され,海外で大きな問題となっている生物も存在します。
 一例を挙げると,日本を含め北太平洋沿岸原産のマヒトデが,オーストラリアの海岸で養殖されていたホタテやカキを食害して問題となりました。持ち込まれた原因のひとつと考えられているのが,日本とそれらの国々を行き来する船が運んでいる海水「バラスト水」です。
 バラスト水は船舶に荷物が積まれていないとき,船の重心を下げるためなどの目的で船内のタンクに積み込まれ,寄港先で荷物が積み込まれると排出されます。積み込んだ港と全く別の場所で排出されるため,例えば日本で積み込まれた水に含まれていたマヒトデがオーストラリア沿岸まで運ばれ,そこで定着する,ということが起こります。
 バラスト水には他にも多くの水生生物が含まれており,日本由来のものに限らず世界各地で外来生物を運搬し,生態系を擾乱するものとして問題視されています。

 科博では日本館2階『日本人と自然』の中で,「持ち込まれた生き物たち」としてセアカゴケグモほか外来生物について紹介しています。


写真:「持ち込まれた生き物たち」コーナーに展示中のセアカゴケグモ(赤楕円内)


(研究推進課 西村美里)



より詳しく知りたい方のために
環境省