2008-07-01

特定外来生物セアカゴケグモ (協力:動物研究部 小野展嗣)


セアカゴケグモ,2つの問題

 セアカゴケグモの毒は,咬まれることによって体内に注入されます。問題の成分はα−ラトロトキシンというタンパク質で,体内に入ると神経と筋肉が接合する部分の神経側に作用して神経伝達物質アセチルコリンを急激に,また必要以上に放出させてしまいます。その結果咬み傷のみならず,全身の筋肉に痛みや痙攣が生じます。吐き気やめまい・頭痛・高血圧・呼吸困難などの症状を訴える人もあります。
 しかしおとなしい性質のため直接触ったり掴んだりしなければ咬まれることはほとんどありません。また現在では抗毒血清が開発されており,この毒によって生命の危険に晒されることは原産国でもごく稀になりました(小児や高齢者の場合には重症化する危険があり,大人でもアナフィラキシーショックを起こす可能性があるため,咬まれたと思われる場合は自己判断で放置せず,速やかに医療機関を受診してください)。


 セアカゴケグモについてもうひとつの問題は,それが元々日本にいない生物であった筈だ,という事実そのものです。
 今日,貿易の国際化やエキゾチック・アニマルの飼育ブームなどにより,多くの野生生物が偶発的に,または人間の手によって国境を超えるようになりました。
 本来の生息地域ではない場所に連れてこられた生物の多くは,人間の庇護がなければ生きていくことは困難です。逃げ出した個体1世代なら生き延びることができたとしても,新たな土地で繁殖し数を増やしていくことは難しいことがほとんどです。

 ところが,やって来る個体の数が極端に多かったり,地球温暖化などの影響によって新しくやってきた土地の環境が変わったりした場合,新たな土地に適応し,定着・繁殖することがあります。
 セアカゴケグモも初めは持ち込まれていただけでしたが,温暖化のため日本で越冬できるようになり,定着しつつあるのではないかと危惧されています。

※日本に生息する「毒グモ」は,セアカゴケグモだけではありません。同じく外来種で神奈川県横浜市などの港湾地域で発見されているハイイロゴケグモ,山口県で発見の情報があるクロゴケグモが知られており,国産種ではフクログモ科のカバキコマチグモがあります。全国に広く分布しており,ススキなどイネ科の植物の葉をちまき状に巻いてつくった巣の中に住んでいます。手で掴んだり,巣を壊したりしなければ咬まれることは滅多にありませんが,咬まれると激しく痛み,傷口が腫れたり水ぶくれになることもあります。

※「毒グモ」として悪名を馳せることとなってしまったこれらのクモたちですが,実際は他の多くのクモも毒を持っています。クモ毒は獲物とする昆虫を麻痺させるため,或いは天敵から身を守るために発達したものであり,人間に有害な成分を含む毒を持つクモ,人間の皮膚を貫通できる大きさの毒牙を持っているクモはごく一部です。

参考:毒グモとその毒 (大利他,現代科学,1996,(302))