2008-03-15

第9惑星再び!? −海王星の外側に新たな惑星の可能性 (協力:理工学研究部 西城惠一)


惑星の定義の見直しと冥王星論争

 太陽系に惑星は果たして幾つあるのでしょうか?この問題は古くから,人々の関心を呼んできました。

 18世紀の初めまでに知られていた惑星は,地球を除くと水星・金星・火星・木星・土星の5つでした。
 1781年,イギリスでドイツ人天文学者ハーシェルが天王星を発見しました。この発見は偶然で,ハーシェル自身彗星を発見したと発表してしまったほどでした。
 1846年にドイツのガレによって発見された海王星は,天王星の観測によって存在を予言されていたものでした。天王星の軌道は理論的な計算から求められたものと実際に観測されたものとにずれがあり,それが未発見の惑星の影響によるものではないかと考えられたのです。フランスのルベリエとイギリスのアダムスはそれぞれ独自にこの未発見の惑星の軌道を計算で求めました。そしてガレはその計算の結果を元に,海王星の観測に成功しました。
 海王星の影響を考慮してもまだ天王星の軌道がずれている,との指摘から更なる惑星の捜索が続けられ,1930年,アメリカのトンボーが冥王星を発見しました。(※3)

 冥王星は他の惑星と比較して軌道の離心率が大きく,海王星の軌道の内側にまで入り込んでいます。また傾斜角も大きく,発見当初から「変わり者の惑星」とされてきました。(※4)
 その後1990年代になると,海王星より外側の軌道を持つ太陽系外縁天体(TNO)で冥王星に近い大きさの天体が複数個発見され,冥王星を惑星として他のTNOと区別する理由があるのかどうか疑問視されるようになってきました。
 2005年に発見が公表され,後にエリスと命名されることになるTNOは,冥王星より直径が大きく,また衛星を持っていたため,冥王星に次ぐ第10番目の惑星としてはどうかと検討されたこともありました。
 しかし冥王星,後のエリスともに,軌道が他のTNOとそれほど違っているわけではないという問題がありました。冥王星を超える大きさのものは確かになかったものの,2000年以降相次いで発見された大型のTNOの扱いをどうするのかも問題でした。更には他のTNOにも,衛星を持つものがあることもわかりました。

 そして2006年,チェコで開かれた国際天文学連合の総会で,後のエリスやその他の大型のTNOなどを新たに惑星と認めるかどうかを含めた,太陽系の惑星の定義の見直しが審議されました。その結果太陽系の惑星の定義は
 @太陽の周りを公転していること
 A自己の重力によって球形になることができるだけの質量を持っていること
 B同じ軌道上に他の天体がないこと
の3つを全て満たすもの,とされ,冥王星はBを満たしていないとして惑星から除外されることとなりました。

 さて,今回の「新惑星」はこの3つの条件を全て満たすことができるでしょうか?新たな探索システムによってその存在を確認することができたとしても,同じ軌道上に他の天体がないことが証明されるには多くの時間が必要になると考えられます。
 最終的に新たな惑星として認められるのかどうかは今はわかりませんが,今後の経過を楽しみに見守ってきたいところです。


※3 ずれの指摘から計算で求められた軌道と実際の冥王星の軌道は全く異なっており,冥王星の発見は偶然によるものであったことが後にわかっています。また,探査機などにより各惑星の質量が正確に求められ,このずれは見かけのものであったことがわかりました。
※4 1970年代末ごろまでは,冥王星のサイズや質量は地球と同程度かそれよりやや小さいぐらいだと思われていました。しかし現在では,大きさは直径2400km,質量は地球の約1000分の2で月の5分の1以下であることがわかっています。


写真:ハッブル宇宙望遠鏡により撮影された冥王星(左)と衛星カロン(NASA/ESA)