2007-12-15

遅くなった紅葉 (協力:附属自然教育園 萩原信介)


「紅葉」・「黄葉」のしくみ

 樹木の葉や草は何故緑色に見えるのでしょうか。
 葉の細胞を顕微鏡で観察してみると,楕円形をした緑色の構造物が数多く含まれていることが分かります。これを葉緑体といい,光合成(※2)を行なうための細胞小器官です。
 葉緑体にはクロロフィルと呼ばれる,光合成色素が含まれています。光合成を行なうためにクロロフィルは光を吸収しますが,光の波長によって吸収の度合いが大きく異なります。わたしたちの目に見える光,可視光線の波長はおよそ350ナノメートルから800ナノメートルですが,このうち550ナノメートル付近の光はほとんどクロロフィルに吸収されません。その結果,わたしたちの目にはクロロフィルに利用されずに反射されて来た緑色の光だけが届き,葉を緑に見せているのです。

 それでは何故,「紅葉」した葉は赤に,「黄葉」した葉は黄色に見えるのでしょうか。
 光合成の効率は,十分な光が与えられている時には温度が25度程度で最も良く,また温度が低い場合には,たとえ十分な光があっても光合成効率は悪くなります。
 秋になり,気温が低く,また日照時間が短くなると,温度も光も不十分なため光合成の効率は下がることになります。葉はそれ自体も養分を消費しているため,葉が生産する養分が消費する養分より少ない場合に葉を残すことは植物の生存にとって不利になります。また冬の空気は乾燥しているため,葉の表面から水分が蒸発することも問題です。秋の晴天によって紫外線が増加し,活性酸素が増大するというデメリットも生じて来ます。
 そこで落葉樹では秋になると,落葉の準備が始められます。通常クロロフィルは常に分解・再生産されることを繰り返していますが,再生産が抑制され,分解だけが行なわれるようになります。その結果,緑色が薄くなり,葉に含まれる他の色素の色が見えるようになります。
 黄色に見える「黄葉」は,葉の中にもともとクロロフィルと一緒に含まれていた,「カロテノイド」という黄色の色素が見えて来ることで起こります。
 一方赤に見える「紅葉」は少し複雑です。「紅葉」する樹ではクロロフィルの再生産停止と同じ頃,葉の根元と枝の間に「離層」と呼ばれるコルク状の物質が形成され,葉と枝の間の物質の交換を妨げるようになってきます。葉で作られたブドウ糖が,枝に流れず葉に蓄積されるようになるのです。ここに日光,特にその中でも紫外線が当たることでブドウ糖が分解され,それまで存在しなかった新たな色素,赤色の「アントシアン」がつくられるのです。
 イロハモミジなど「紅葉」する葉をよく観察すると,初め緑の葉は赤と緑が混じった茶褐色の時期を経て,次いで全体が赤色に変わって行きます。(右上図参照)
 これはクロロフィルの再生産停止とアントシアンの形成が,葉の表面のさく状組織と呼ばれる部分から先に起こるためです。葉のより深い部分は海綿状組織と呼ばれ,比較的後までクロロフィルが残ります。さく状組織に新しい色素アントシアンが生成されることで,未だ光合成の機能を残している海綿状組織を紫外線から保護しているのではないかという「紅葉メリット説」が提唱されています。