トキ

トキの羽色は大部分が白いが、風切羽や尾羽はオレンジがかったピンク色でトキ色として知られる。繁殖期には頭部から背中が灰色に変化する。この羽色の変化は顔の裸出部のまわりから分泌する黒い色素を塗りつけることで生じる。このような羽色変化は9000種にもなる鳥類の中でただトキにのみ知られる特殊なものである。トキは湿地に適応した長い足指と小さなみずかきをもち、下に湾曲した長い嘴の触覚で、深い泥中の食物を探り当てる。山間の田や沢でドジョウ、タニシ、サワガニなどを食べ、日本の水田地帯の環境によく適応していた。

江戸時代には北海道から九州までほぼ日本全国に分布していたが、明治時代以後狩猟により数が激減した。1920年頃にトキは絶滅したと考えられたが、1930年前後に能登半島で約20羽、佐渡で100羽ほどの個体が確認された。しかし、その後も戦争や農薬の影響などにより、個体数は減少し、1981年佐渡に残った5羽が捕獲されて飼育下に移され、自然繁殖する個体は事実上消滅した。1985年には中国から雄のトキを借りるなど、飼育下繁殖への努力が最大限続けられたが、すべて失敗に終わった。1995年に雌の「ミドリ」が死んで、高齢の雌「キン」1羽が残るのみとなり、事実上日本のトキの系統は絶えることを余儀なくされたように思われた。しかし、「ミドリ」の細胞は保存されているので、その始原生殖細胞を近縁種の胚に移植し、トキの卵や精子を作らせ、日本のトキを復活させることが技術的には可能であろう。また、中国ではいくつかのつがいが自然繁殖しており、飼育繁殖にもある程度成功している。中国から贈られた「友友(ヨウヨウ)」と「洋洋(ヤンヤン)」の繁殖にも期待がかけられている。

 

トキ

 

 

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