未来人の顔を予想すると、昔から想像されてきた火星人のようなイメージを描くことが多い。つまり、頭が巨大になり、眼以外の顔が極端に退化した状態である。たしかに、あと数万年もすれば、そんな未来人が現れるかもしれない。しかし、ここでは数十年後あるいは数百年後の日本人の顔につき、具体的な根拠にもとづいた方法で予測してみよう。つまり、過去に起こった傾向を外挿(延長)して未来を予測するのである(図1)。

図1 データにもとづき画家が描いた未来人のイメージ(イラスト・石井礼子)

 縄文人と弥生人からの予測

 最近の人類学の研究により、現代日本人は、1万年以上前から日本列島に住んでいた縄文人と、約2,000年前に大陸からやってきた弥生人との混血によってできあがったことがわかっている。そこで、縄文時代の平均的な顔と弥生時代の平均的な顔が混ざり合って現代日本人の顔ができたと仮定して、その混ざり具合をCG(コンピュータ・グラフィックス)で表してみた(図2)。
 もとになるデータは、縄文人・弥生人・現代日本人の平均的な頭骨(厳密な平均的頭骨はないので、典型的な頭骨を選んでいる)の正面線画、そして縄文人的な表面の部品(目・鼻・口・眉)と弥生人的な表面の部品の写真である。
 まず、標準的な顔の骨組み(骨ではなく、顔の大まかな形)を、たくさんの三角形を組み合わせた立体的なワイヤーフレーム・モデルという形でコンピュータの中に用意する。次に、そのワイヤーフレーム・モデルを、縄文人・弥生人・現代日本人の頭骨正面線画から復元した顔の形に合わせて変形する。第三に、縄文人ワイヤーフレーム・モデルには、プロレスラーから拝借した縄文人的な部品を貼り付けた。弥生人ワイヤーフレーム・モデルには、科学雑誌『Newton』編集室のみなさんから拝借した弥生人的な部品を貼り付けた。現代日本人ワイヤーフレームには、縄文人と弥生人とを平均化した部品を貼り付けた。
 後は、モーフィングというコンピュータ技術によって、縄文時代および弥生時代から現代に至る変化過程を表すことができる。この過程では、顔かたちの変化と、縄文人と弥生人の部品の混合との両要素が並行して進んでいる。さらに、縄文時代および弥生時代から現代までの過程を延長すると、CGによる未来顔1号ができあがる(図2)。現代から未来へは、縄文顔/弥生顔の混合は終了し、顔かたちの変化だけが起こったと仮定している。
 この未来顔の誕生がいつのことなのかはわからない。50年後、100年後、あるいは数百年後かもしれない。

図2 日本人の顔の進化のCGシミュレーション(画像提供・東京大学工学部原島研究室)
縄文人と弥生人の顔がまざって現代人の顔に進化した。その傾向が続くと未来の日本人の顔はこうなる(未来顔1号)。