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マイクロ・モラスカ-微小貝類の研究

長谷川 和範
世界最小クラスの貝ミジンワダチガイ殻径0.5mm
世界最小クラスの貝 ミジンワダチガイ殻径0.5mm
マイクロ・モラスカって何?

貝類の仲間は専門的には軟体動物(Mollusca:モラスカ)と呼ばれます。名前の付けられているものだけで10万種類近くに及ぶ大きなグループで、食用、装飾など多方面で人間の生活にも関わりがあります。この中で、成熟しても5mmに満たないミクロな種類を、便宜上微小貝(マイクロ・モラスカ)と呼びます。
見つけ難く、調べるのも難しいことからこれまであまり研究が進んでいませんでしたが、これら微小貝は軟体動物の種類数全体の大きな部分を占め、また系統上重要な種類を含むことから、近年注目されつつあります。
私も大学院博士課程からマイクロ・モラスカ(特に巻貝)を中心に分類学的な研究を進めてきました。
西表島の海底で石を洗う
西表島の海底で石を洗う
どうやって採集するの?

場合によっては1mmにも満たない種類を、広大な海のなかからどうやって採集するの?とよく聞かれます。もちろん海の中で直接見つけ出すことはほとんど不可能です。微小貝が棲んでいそうな環境の、海底の石の裏や海藻をブラッシングしたり、ドレッジやトロールで採取した海底の砂を篩って、顕微鏡の下などで詳しく調べます。

研究の方法

他の貝類の研究方法と基本的には一緒です。ただ、体のサイズが小さいため外部形態などの観察には電子顕微鏡が、体の内部の構造を知るためには切片の作成が不可欠です。特に巻貝の分類には歯舌と呼ばれる消化器官の一部を詳しく調べなければなりません。殻の長径0.5mmの貝の口の中にある0.05mmほどの歯舌を取り出して薬品処理し、電子顕微鏡試料とするのには大変な神経を使います。
調査船のデッキでソーティング
調査船のデッキでソーティング
ラロケラ属新種候補 歯舌(上)と頭足部(下)
ラロケラ属新種候補 歯舌(上)と頭足部(下)
現状と課題

当初、私は自分で潜れる程度の浅い海に棲む種類を中心に調べていましたが、科博のプロジェクト研究である深海調査や相模湾のドレッジ調査に参加することによって、もっと深い海にはさらに夥しい数の未記載種(学名のついていない種類)が分布していることがわかってきました。
日本のマイクロ・モラスカの全体像を明らかにするためには、今後多くの研究者の共同研究が必要です。
展示ポスターはこちらから
長谷川 和範(はせがわ かずのり)

長谷川 和範(はせがわ かずのり)

海生無脊椎動物研究グループ

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