私の研究 -国立科学博物館の研究者紹介-

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しろかねの森(附属自然教育園)の“森番”38年間もやっています

矢野 亮
森番(森の番人)の仕事

(1)天然記念物に指定された森の維持・管理です。
野草の増殖・草取り・枝下し・枯木の伐採・園路の整備・台風大雪対策・落ち葉掃き・外来種駆除・園内巡視・ゴミ拾い・便所掃除など何でもやってます。
(2)森に住む生きものたちの生活を調べます。
動物(ヒキガエル・ハシブトガラス・カワセミ・チョウ・キアシドクガ・ゲンジボタルなど)、植物(スダジイ・アオキ・ミズキなど)といろいろな生きものたちの生活を調べています。
(3)いろいろな人に森の楽しい出来事をお話します。
自然教育園の中にすむ動物や植物の生活についてお話します。また、植物を使ったクラフト作りで子供たちと遊んだりもしています。じつは、これが私の専門なのです。作品の一部を下のケースに展示しました。
カワセミに関するこだわりの100%

私とカワセミとのお付き合いは約20年になります。これまでにいちばん力の入った仕事です。
ふだんはちゃらんぽらんな性格ですが、ことカワセミに関してだけは完璧(100%)でないと気持ちがおさまらないのです。
つまり、ミスは許されないのです。
Impatiens tongbiguanensis
保護飼育中の7羽のカワセミの雛
(1)1994年に育雛期には雛が孵化してから巣立ちまで親鳥が何匹の餌を運んでくるのか、また、1995年の抱卵期は、オス・メスでどのように抱卵するのかという難問に挑戦しました。ともに、早朝3時30分起床、3時50分自宅出発、4時10分自然教育園着、まだ
真っ暗の中での調査開始です。昼間はビデオカメラにまかせ、夕方5時から7時まで現地で調査、その後夜9時までビデオテープの整理、これを育雛期は25日間、抱卵期は20日間頑張りました。この間寝坊もなく、機械の故障もなく、カワセミの親の失踪もな
く完璧(100%)な記録がとれました。

(2)また、2000年には育雛期に両親とも失踪したため、巣穴から雛を救出しました。何と雛が7羽もいました。カワセミの人工飼育の成功例はほとんどなく、毎日が試行錯誤の連続でした。親鳥と同じように早朝4時30分起床、1時間おきに給餌、夕方7時終了、
45日間保護飼育した結果、7羽全てが順調に育ち、自然教育園内に放鳥することができました。また完璧(100%)です。

(3)2000年頃、自然教育園の池に外来種のブルーギルとブラックバスが密放流され、カワセミの餌である小魚やエビが激減しました。そこで、入園者のいない早朝と夕方釣りをしたり、池を浚渫するなど、多大な労力と莫大な経費をかけて外来魚を完全に駆
除することができました。これまた完璧(100%)です。
Impatiens tongbiguanensis
駆除したブルーギルとブラックバスの稚魚
ここだけのマル秘のはなし

2004年5月から今日まで約3年3ヶ月間、私はあるプロジェクトの責任者?をやっています。
朝ちょっと早いのですが、比較的慣れています。毎朝5時起床(休みの日もこの時刻に目が覚めてしまう)、
6時15分頃自宅出発、7時30分頃自然教育園到着が日課です。
○秘なので詳しいお話はできませんが、実質的には約1時間で終了します。
このプロジェクトは自然教育園だからできた、森番としては最も誇りのある仕事です。これまたカワセミの時同様ミスのない完璧(100%)を目指しています。
最後に一言!

自然教育園は、自然林維持管理・調査研究・教育普及と三拍子揃った日本でも唯一の緑地です。
しかも中世の時代から400~500年かけて培われた自然環境、自然教育園となってからも60年近くの歴史があり、 動・植物、無機環境に関する詳細な研究資料の蓄積があります。
また、教育活動も開園当初から数々の特色のある活動を行ってきました。
しかし、行財政改革の中、独立行政法人の運営状況は厳しく、自然教育園の研究員の数も減ってきています。
この貴重な自然を守り、伝統と実績のある教育活動を引き継いでいくことは大切なことです。
ご理解とご支援をお願いいたします。
展示ポスターはこちらから
矢野 亮(やの まこと)

矢野 亮(やの まこと)

(退官)

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