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 変貌してきた白金の森(附属自然教育園)

萩原 信介

 私の専門は植物生態学で、自然の中で植物がどのように生活をしているのかを調べる学問です。大学院時代は日本のブナや野草の変異を研究していましたが、自然教育園に来てからは、異常繁殖を続けるシュロの繁殖の研究、園内の森林の遷移、地球温暖化で変化する開花時期などを調べる生物季節のデータ収集を主に行っています。またアルソミトラなどの空飛ぶ種子模型の開発も続けてきました。

国立科学博物館附属自然教育園 俯瞰
園内に広がるシュロ
園内に広がるシュロ
シュロの繁殖
シュロは中国の亜熱帯地方に生育しますが、平安時代に鐘の鐘木や縄に利用するため移入された植物です。自然教育園には1965年には2本しかありませんでしたが、この40年間で2149本に増え、約1万ある樹木の中で20%にもなりました。増えた理由はいろいろとありましたが、冬の気温の上昇で土壌凍結がなくなったことが一番の要因であることがわかりました。シュロだけではなくクスノキ、ビワ、ナツミカン、キウイなど亜熱帯性の植物が増える現象も同じ原因です。こうした外国の植物ですが、現在の都市の生態系を考えたとき、CO2の吸収能力など考えるとこれらの植物は現在の東京では最強のピンチヒッターの役割を果たしていると考えられます。

シュロの増加と1月の気温

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スダジイ巨樹の切株からわかったこと
開園した当時スダジイの巨樹が約60本ありましたが、現在は約40本になりました。枯れた巨樹の切株の年輪から樹令が280年前後に集中していることがわかりました。下屋敷時代の宝暦年間前後に土塁上に植栽されたスダジイと推定されました。
スダジイ巨樹の年輪

スダジイ巨樹の年輪

 園内の植物を調査して感じたことは、この60年間に森林に大きな変化が見られるということです。そのため、20年ほど前から全ての木にラベルを付け正確な位置を持った地図とデータベースを作り、成長量、枯死原因等を記録し続けています。また日々の生物季節の記録は45万件にもなり、都市が温暖化していく様子が植物の生活や種類の変化に反映されていることがはっきりわかってきました。このような変化が私たちの生活にどのような影響があるのかを考えていきたいと思っています。
展示ポスターはこちらから
萩原信介(はぎわら しんすけ)

萩原信介(はぎわら しんすけ)

都市緑地生態研究チーム

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